ゆうきさらのほんよみにっき@はてブロ

はてなダイアリーから引っ越しました。ゆうきさらが読んだり見たりしたものを気ままにつづります。

「江戸は燃えているか TOUCH AND GO」を観てきた

www.parco-play.com

 

あらすじはこちら。

3/3の初日に行ってきた。冬の関東荒野から自分の育ってきたフィールドに戻ってきた感がものすごかったんだけど、そこはとりあえず置いといて。

場所は新橋演舞場。これまで全く縁のなかったハコで、たまたま東京に行くのが決まったときに残っていたのが3階席だったので、とても気軽な気持ちで出かけて、幕間の間にお弁当が食べられるということでおむすび弁当を買って舞台を見下ろしてたら。

 

 繰り広げられるのはめくるめく笑いの世界。ただひたすらにおかしくて、愚かで必死で真面目だったり不真面目だったりする人々の織りなす喜劇にひたすら笑って拍手をしていたら、なんと翌日掌が腫れたという。

勝海舟中村獅童、その身代わりを務めるハメになる一歩引いた目線の庭師・平次にTOKIO松岡昌宏、江戸の未来を憂うあまり突飛な言動で混乱をもたらす松岡茉優にその母親で天然爆発な八木亜希子、長年仕える女中頭であり勝海舟の愛人でもある高田聖子などなど、という布陣なんだけど、まあとにかく松岡茉優のコメディエンヌっぷりが物凄く板についていて。

 「真田丸」「勝手にふるえてろ」と松岡茉優に関しては映像作品での巧さが印象的だったんだけど、舞台上でも美しさとは裏腹の、ある種の狂気に満ちたコメディエンヌっぷりは強烈で、とにかく台風の目だった印象。

 そして今年の大河の題材である西郷どんもちゃんと出て来て、こちらは真面目な役回りを背負っているんだけど、真面目なだけに余計面白いという。

 二幕に向けて怒涛の笑えるシーンオンパレードなんだけど、そこで笑わせるための緻密な伏線と、登場人物全員の関係性がすぐに想像できる座組の密度の濃さが素晴らしかったなあ。

 嘘が嘘と疑惑を呼んだ最後の最後、中村獅童ここにあり! という存在感で話をまとめ、いい話だった……で終わると思いきや。(下記にネタバレあり)

 

 時代考証に山村竜也さん、薩摩弁考証に迫田孝也さんという三谷大河でもおなじみの布陣と、あとどう考えても真田丸のナレーターやってませんでしたかあなた、というお方のナレーションも面白かったなあ。

 

 ひたすら笑って笑って驚いて、最後に時代のうねりを突きつけられる、嘘を題材とした三谷作品もアップデートしているんだなと実感した一作。本当はもう一度くらい観たかった……残念ながら花道は観られなかったんだけど、幕間に食べるお弁当は笑いすぎてカロリー消費したせいもあって、とっても美味しかったなあ。

 新しいパルコ劇場が出来たら、そちらでも是非観てみたい作品。ただただ、楽しかった! 久々の三谷コメディを堪能しました。……といいつつも、ラストでどデカいどんでん返しがあったんだけども!

 

 

 

 

(以下ネタバレ)

 

 

 

 

 

 

 

 最後の最後、庭師の平次が心を弄んでしまった女中のいと(磯山さやか)に背後から刺されるという衝撃的な展開に、私の周りでは小さな悲鳴が上がったし、私も呆然と舞台を観ていたんだけども。

 江戸城明け渡しの話がまとまり、平次が刺され、ラストシーンは花散る勝海舟の屋敷。平次がどうなったかはわからない。その理不尽な暴力に息を呑んだし、ここから先、勝海舟に「身代わり」は存在しないんだ、という残酷な事実を突きつけて、楽しいコメディの時間が終わる瞬間が、奇妙な程にアンバランスで、とても印象に残っている。

ドラマ「振り返れば奴がいる」のようなラストではあるんだけど、降る花びらはまるで今後の江戸の未来を彩るかのように綺麗で、だからこそ人柱のように犠牲になった平次が切なく愛しかったなあ。