ゆうきさらのほんよみにっき@はてブロ

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舞台『刀剣乱舞』悲伝 結いの目の不如帰(5)7/29大千秋楽ライブビューイング

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過去エントリは上記です。

 

 

観てからちょっと時間が経ちましたが、大楽ライビュに行ってきました。

……のはいいんだけど、今回も台風接近で天候がどうなるかわからなくて、本当は博多で観る予定だったのが、急遽チケットを交換して頂き、博多滞在時間2時間半で地元に戻ってライビュを見るというおまけつき(しかも終わった時には晴れていた……)。

中止になった北九州といい、個人的には最後まで悪天候に振り回された舞台でしたが、なんとか無事に見届けられたので良かったです。

 

以下ときどき敬称略。そしてネタバレしかないのでよろしくお願いします。

多分これまでの感想の中で一番まとまりがないんだけど、思いついたことをつらつらと。

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大楽に関しては、まんばちゃんの極は来なかったけど(上記エントリ(2)参照)、ラストの白三日月VS山姥切国広の対決で山姥切国広が勝ったという衝撃の展開に全部持って行かれた……というか、その前に鵺と呼ばれるが初めての登場じゃなかった的なセリフがあったところで「あれ?」となり、山姥切国広に歴史が降ってくるシーンでの変更に「あれあれ?」となり、そしてラスト「北九州まではなかった『煤けた太陽』が回収されてる!」「殺陣の段取りが違う!」と気がついた瞬間に号泣しそうになって頭が真っ白になったので、後で配信を見返してようやく落ち着いて観られた(でも毎回泣く)という有様でした。パンフレットやインタビューではずっと匂わせていたけれど、まさか本当にやってのけるとは。こんな驚きが待ち受けているとは思いませんでしたよ……。

 

ED変更は小劇場系だとちょいちょい聞く話だし、最近だとA3とか、ちょっとベクトルは違うけど、今年1月に上演された翻訳もののストレートプレイ「TERROR テロ」で最後に観客が有罪か無罪かを投票して毎回結果が変わるっていう、観客巻き込み型のED変更をやっていたっていうのを聞いたりはしていたんだけど、実際に自分が観た舞台でそれがあるとめちゃくちゃ衝撃を受けるんだな、というのが個人的な印象。

初日明治座の映像を残したのはそのためだったのか、と物凄く納得したんですが、映像に残すことを徹底している作品だからこそ出来る攻め方だなと。

 

実際に明治座→北九州でもラスト殺陣にはちょっと変化がついていて、

明治座…圧倒的だった白三日月→北九州…ボロボロだった白三日月が話しているうちに少しずつ力を取り戻して背筋を伸ばすという動作が追加

というのがあったんですが。まさか最大の日替わりが三日月VS山姥切の殺陣とは。

明治座と北九州に一緒に行った友人が実は予想していた)

もし機会があれば、蔵出しに全部収録して欲しいなと思いつつ。

役者の演技の変化も含め、悲伝は1公演1公演が、三日月の繰り返したループで、大千秋楽は変化の起きたループだったんだなあと改めて実感した次第。まさに役者が毎回生でやる演劇というメディアでしか出来ない要素なんですよね、これ。

 

ただ、何がえげつないかって、山姥切国広が勝ったところで、三日月宗近が刀解されるという円環の結びにはまったく変化がないというのが。

しかも、山姥切国広が三日月宗近の約束を受け入れて「強くなる」ことを選択したことで、もしかしたら山姥切国広も、三日月宗近の隠している何らかの重い運命を一緒に背負い込むのではないかという、恐ろしい可能性まで匂わせるという……。

山姥切も三日月も、これまでに見せなかった笑顔を最後に見せたし、最後の三日月の顕現時に虚伝初演の時の顕現ボイスになっていたということで、虚伝初演の時点に三日月は戻ったのだろうと個人的には思ってるんですが、ただ、それが何を意味するか、ということについては、今後刀ステ二期があることを期待するしかないんだろうな。

 

明治座で最初に観た時には、ただただ、何も言わず一切を隠し通して消えゆく三日月宗近が悲しかったんだけど、大楽に関しては、エンディングを観て2日くらい経って、笑顔の重さに打ちのめされるという奇妙な経験をしました……。

 

でも、このエンディングの変化については不思議ではないというか。

そもそもこのラストの変化は、虚伝初演と虚伝再演を踏襲していると思うんですね。初演の時の蘭丸にはなかった、ループを繰り返していることを匂わせる台詞が再演で追加されているものの、最終的に信長はやはり自刃し、「織田信長とは何者なのか」という揺さぶりを刀剣男士達に残して終わるのに呼応するように、悲伝でループを繰り返していたことが明らかになった三日月宗近が、千秋楽で虚伝初演に還り(多分)、「三日月宗近とは何者なのか」という揺さぶりを刀剣男士にもたらして消える、というのは、個人的にとても好きな構成です。

 

あと、歴史ものを観ているときに、例えば「今回こそ石田三成が勝つのではないか」とか、「織田信長が死なない未来があるのではないか」とふと考えてしまう歴史のIFを、二人の殺陣の勝敗が変化するのに三日月は刀解されるというという展開で容赦なく否定するのが、とてもメタフィクショナルだなと。どう干渉しようと、歴史の大勢には変化がない。それは三日月宗近が告げた通りの厳然たる事実。

けれど、三日月宗近と山姥切国広の歴史はまだ過去のもの、変化しようのないものにはなっていなくて、未来に向けては白紙になったのだ、というのが、歴史が降ってくるシーンから太平洋戦争の描写が消えたことで明らかになったのだと信じたいなあ……。

個人的にはここで刀ステの物語が閉じてしまうならば、それは演劇的には美しい終わり方だとも思うんですよね。訳のわからない理不尽な悲劇が襲いかかってきて、それに呑み込まれたものと揺さぶられたものたちの物語として、幕が降りるのもアリなんじゃないかとは感じたんだけども。ただ。

 

monokaki.everystar.jp

 

上記末満さんのインタビューにもあるけれど、ゲーム中の物語が進展していない状態で派生作品である刀ステが、勝手にSF的なギミックを定義した上でSFとして物語を閉じるのは現時点では難しそうだと思うので、ある程度ゲームの内容が提示されてからじゃないと「大団円」と末満さんが言う物語の未来には進めないんだろうなと。

でも、もし可能ならば、その大団円だけでも、キャスト変更なしで描いて欲しいとちょっと我儘なことを考えてみたり。

というのも。

 

ameblo.jp

 

荒牧くんのブログとニコ生で語られていたんだけども、大楽のラスト殺陣は稽古時にはなかなかうまく行かなくて、けれど本番ほぼ一発勝負で成功したという恐ろしい、まるでフィクションみたいなエピソードがあり。

ニコ生を見たあとにディレイ配信を見たら、実際に三日月に勝った瞬間の山姥切が、一瞬本気で呆然としてたんですよね。LVの段階でもその表情は物凄く的確に抜いていたと思うし、負けて晴れやかに笑う三日月の表情が、美しい刀が最期の力を振り絞って、ぼろぼろになりながらも希望を灯した瞬間のように思えて、それが余すところなく映されたのが素晴らしかったので、撮影班最高だなと改めて感謝した次第……。そして、実際に打ち合って誉れ傷だらけになった二振りの刀を大写しにしてくれたのも。普通なら殺陣だと実際に刃は当てないんでしょうけども。

またここで見届けた小烏丸の笑顔が実に温かくて。

 

明治座初日からラスト殺陣の三日月VS山姥切は、他の誰も入り込めない技巧と、ほとばしる感情と、演技だけではない関係の濃密さに溢れていて、北九州でも実際に観た時にはひたすら息を呑んで見守るしかなかったんだけど、大楽ではキャスト全員が袖で二人の殺陣を見守って、荒牧くんがハケたときに拍手で迎えられたという現実と芝居とが交錯するような話を聞いた日には、せめて物語の結びだけでも鈴木三日月と荒牧山姥切の二人で、どうしてもやって欲しいと願ってしまうなあ……。2.5次元舞台にキャスト変更はつきものだとわかってはいるんだけど、あの殺陣はおそらく、あの二人でないと出来ないだろうと突きつけられてしまったような。

苦難だらけの道を必死で乗り越えてきた刀剣男士キャストに、演劇の神様が微笑んだ瞬間を見た気分。

だからこそ、今はブッキングが難しいかもしれないけれど、数年後、さらに表現力を磨いているであろう現キャストになるべく続投してもらう形で、何らかの結びがあるといいなと思ってしまうわけで。

個人的な事情として、北九州前楽、劇場での観劇ラストの予定だった日、1桁目列で観られるはずだった公演がまさかの中止になってしまって、そのことへの残念な気持ちが消えないっていうのはあるんですが。

 

キャスト個別感想に関しては以前アップしたエントリからそんなに変化はないんだけど、キャストの成長具合に目を瞠った2ヶ月でした。特に加藤くん大物になってくれ。

そして座長・鈴木さんに関しては、殺陣や所作のブラッシュアップ具合が凄まじくて、最終的にまるで能を思わせる動きに昇華されていたなと。最小限の動作で最大の情報伝達をする無駄の無さが人間離れしていて正直恐ろしかった。

あと、何故三日月ウィッグのサイドがあんなに厚いんだろうと今回不思議だったんだけど、三日月の表情を見せないためだったのかなと。要所要所でサイドの髪を利用して表情を隠して、観客に見せる表情の情報量を意図的に減らしているように見えたんですよね。それこそ能の面をつけているみたいに。おそらく舞台に近い観客も遠い観客も、三日月の表情が伝える情報量は同じくらい間引かれていたんじゃないかなとようやく気が付き。重要なシーンでも大体横を向いているか観客に背中を向けているかだし。物語の中心ではあるけれど、物語を動かす主人公ではない、という役回りがもたらす難しさとの闘いだったんだろうなとしみじみ……。

その分声に感情が乗っていて、普段の喋り方とは抑揚を変えて、三日月が心揺らぐポイントを的確に伝えてくるあたり、やっぱり技巧派の役者なんだなあと再確認しました。あとラスト顕現シーンの台詞の発声な……。鳥海ボイスに忠実なのは虚伝初演とジョ伝の顕現シーン(ただ、この時はしょっぱなから骨喰にお守りを渡しているから、ループしている三日月の可能性が高いけども)の時だと思うんだけど、大楽以外はひろちかボイスだったので、声だけで違うフェイズに突入したんだなとわかるのは凄いなと。

雑誌「Audition Blue」の特集で、三日月宗近の行動原理は愛だ、と鈴木さんは明言していたのですが、その愛がどういう理由に基づくものなのか、もしかしたら鈴木さんは末満さんから聞かされた上で、悲伝の演技プランを組んでいるのかもしれないし、いつかそれが明かされるといいなと願うばかり。

 

そして。明治座LVの時に、悲伝は「とても演劇的だ」と感じて、ならば2.5次元舞台であることと演劇であることとの区別はどこにあるんだろうと考えていたんだけど、カテゴリ分けにあまり意味はなくなりつつあるというか、役者がいて、板の上で演じるならばそれは演劇だし、その中で、アニメや漫画やゲームを原作とするものを、便宜上2.5次元舞台と呼んでいる程度のことになってきているのかも。

私は元々ストプレが好きで、それはひとえに役者が脚本を読んで物語や台詞を解釈し、自らの身体に落とし込んで、感情を与え、登場人物の言葉として、台詞を発して観客に伝えるという行為に一番面白さを感じるからなんだけど(ミュージカルも好きではあるんだけど、歌や音楽っていう別の評価軸が入ってくるから全く別のものとして受け取ってます)、悲伝に関しては、悲劇性や理不尽さ、観客を試すようなぶん投げ具合、そして呑み込み難い何かをぶつけてくるところに、「演劇的」だと感じたのかもしれないと思いつつ。

悲伝はタイトル通り悲劇性に全ステータスを振っていると思うんだけど、悲劇を、ちょっと悪趣味な言い方をすれば、見世物的なエンターテイメントとして消化出来るのが演劇ならではの要素だと思っていて。どれだけ作中で苦しんでも、残酷な死を迎えても、カーテンコールに役者は再び現れて、現実に還らせてくれるという親切設計だし。原作つきであっても、そこに踏み込むことに躊躇しなかったのが、個人的にはとても好きです。ゲームシステムの悲劇的な要素に着目したメタフィクショナルな脚本だと思ってるので。

 

まあその後TRUMPシリーズの一挙配信を観て、末満脚本にしてはめちゃくちゃ手心を加えていたんだなと痛感した訳ですが。登場人物が大体死ぬか死ぬよりも辛い状況に置かれていてもう笑うしかなかったからな……しかも「マリーゴールド」は劇場で観るんだぜ……生きてられるのか私。

 

閑話休題

今回は53公演(本来ならば55公演)ということで少し気になったんだけども、キャスト・スタッフの安全管理は大丈夫なのかなと心配になるところがあったので、もし続編があるにしても、そこは管理を徹底して欲しいなと。

明治座初日ライビュを観たときに、セリが完全に止まっていない状態で移動の動作に入る刀剣男士で冷や汗をかいたんですよ。「挟まれたら事故になる!」と思って。実際セリでの事故は洒落にならない結果になることが多いから……。

そこは事故や怪我を防ぐためにも指導を徹底すべきだろうし、他にも、観客が多い演目とはいえ、正直上演スケジュールを詰め込み過ぎなのではと感じたので、もうちょっとゆとりを持ったスケジュールを組んで欲しいなと……。1回につき3時間半の舞台をマチソワやるだけでも半端なく体力を消耗すると思うんだけど、悲伝に関しては殺陣の量も凄まじかったし、そもそも舞台の殺陣で刃を当てるって割と変則的なようだから、刀の消耗具合も半端なかっただろうし、キャストの皆さんも相手に怪我をさせないよう、自分も怪我をしないよう気も使うだろうし。

千秋楽でキャスト全員の面差しが変わっていたのを観て、全員が揃って終えられたことは殆ど奇跡に近かったのではないかなと。

もし次があるのなら。もうちょっとゆとりのあるスケジュールで運営することを願います。他の作品に関しても同様なんですが。

観客の私も、役者のやりがいを搾取する側なのかもしれないなあと痛感したりとか。どうか無理なく怪我なくご安全に……。

 

改めて、皆様本当にお疲れ様でした。忙しいメンバーばかりだと思いますが、少しでもゆっくりする時間が取れますように。

 

そして、辛くて悲しくて楽しくて愛しい悲伝の2ヶ月を、虚伝から始まる2年間のモノが語る物語をありがとうございました。私は舞台『刀剣乱舞』が大好きだよ。