ゆうきさらのほんよみにっき@はてブロ

はてなダイアリーから引っ越しました。ゆうきさらが読んだり見たりしたものを気ままにつづります。

舞台PSYCHO-PASS Vertue and Vice 2019/4/19ソワレ、2019/4/20マチネ感想(途中からネタバレ有り)

さて、平成最後の観劇でした。実はSPECTER再演も観に行っているんですが、そちらの感想は改めて連休中にでも。

 

ということで。ネタバレに触れずに感想を言うと、

「ハチャメチャにPSYCHO-PASSで、ハチャメチャに面白かった!!!!」という語彙力皆無な状態になってしまうんですが。オープニングのキャスパレ後に暗転した瞬間、「これ絶対に面白いやつだ!」っていう確信があったんだけど、予想以上だった。

あと羅列すると、

●セットとプロジェクションマッピングにめちゃめちゃ金かかってるのでは?

●全く心配していなかったけど役者全員演技が素晴らしい

●アクションの足技最高

●脚本の出来が物凄く良い

●これは後方から全景で観たほうが楽しいかもしれない

●全員フルオーダーのスーツに感謝しかない

●とにかく安っぽさが全くない

●これだけ全部盛りで面白いってチケット代実質無料なのでは???

 

さて、以下ネタバレ感想に進みます。

その前に、PSYCHO-PASSに関しては、一期は大体リアタイで完走しているものの、「うーん、ノットフォーミーかな」ということでそれ以上深入りしていませんでした。あともう一つ、「これ、実写で見たかったなぁ」というのを当時から思ってました。そして敬称略。

 

ということで、アニメのファンの方には不快な部分もある文章かと思います。あらかじめご了承下さい。

以下ネタバレのため改行。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大丈夫かな?

以下項目を分けます。

 

●ストーリーについて

3係全滅エンドかよサイコーだな!!!

…というのが、まずテンション激上がりポイントなんですが。

アニメかコミカライズのどこかで「壊滅状態になった」っていうのを見かけた覚えがあるんですが、その関連エピソードに当たるのかな?

実は今回舞台を観るにあたって、一期途中までアニメを見返して、途中から時間がなくなったのでコミカライズで復習していたんですが。

「ああ、私がPSYCHO-PASSで観たかったのは、シビュラシステムに対する敗者の物語だったんだな」と舞台のエンディングで痛感したんですよ。なので、観終わったあとのカタルシスが半端なかった。観たいものを全部観られたので。

 「潜在犯とラベリングされただけの普通の人」二人がシビュラ・システムに不条理に人生を転がされ弄ばれて、それを知ったときの感情と、その先に何を選択するか、道は分かたれるのか、というのを、九泉と嘉納、そして3係のメンバーで体現してくれたんだなというのがもう、たまらなく良くて。

免罪体質であるけれども対照的な選択をする朱と槙島の考え方は、あの世界では潜在犯とラベリングされるであろう私からは遠すぎて、ただただ強い人達のタフな生き方の物語として、距離のあるままアニメを通り過ぎてしまった人間なんですが。

晴人と火炉の末路を通して、朱の選択にようやく納得がいったんですよね。頭悪くてすまんかった。

 あと、最初のワチャワチャのおかげで執行官全員のキャラが立っていて、さらに現在のエピソードから過去の関係性も滲ませるいい演技があって(特に大城)、しかも死にゆくことに対してきちんと見せ場が提示されるので、たった2時間なのに愛着が湧いて喪失感も凄まじいという。なんだこの密度の高さ。

 

あと、ようやく警察と法務省を潰したっていう話が出たよ!

厚生省が犯罪関係を仕切るまでに絶対何かあるだろと思っていたところでの「ヒューマニスト」の出自だったので、「あっ一応存在してたのか!」と目からウロコでした。

私はどちらかと言うと司法権の犬なので、本編でずっと言及しないことへの気持ち悪さがあったんですが、この辺もしかしたら三期でちょっと触れたりするんだろうか。

それと、犯罪係数の数値はシビュラ・システムの意志で簡単に操作出来るっていう当たり前のことを当たり前に出してきているところも納得で。システムが気分でランダムに人を選んでるっていう世界なのかもしれないし、それならシビュラ・システム自体の存在も逆に合理的だと思うので。独裁国家的なアレ。

 

ラスト、九泉と嘉納がお互いにシビュラ・システムから何をされていたかを知って、対等になった瞬間、最高にバディものだったと思うし、手を取り合うことなく道を分かち、互いにドミネーターを突きつけあい、そこでドミネーターCV日高のり子から無感情に告げられるシビュラの意志からの暗転は、とてつもない浪漫だなと思ったのでした。

 

そして、2時間休憩なしノンストップなストーリー展開は、映画の尺のようで締まっていて良いですね…。

キャラ紹介の前半から、井口の死をきっかけに怒涛の転がり方をしていく展開はプロの仕事だなと。

私多分、深見脚本とそんなに相性良くないと思ってるんですが、PPVVに関してはあまりの面白さに腰を抜かすかと。凄いわ。

 

●セットとプロジェクションマッピングについて

あの…こんなにお金かけて本当に大丈夫? 採算取れてる?

三段のセット+階段で縦に大きく取っていて、さらに可動式半透明のプロジェクションマッピング投影用スクリーンが上下するんだけど、スクリーン移動の合間に暗転なしシームレスにあちこちで役者が物語を進行させているので、待っている感覚があまりなく。

素材もアニメから引っ張ってきているんだと思うんだけど、プロダクションIG印なので違和感もそんなになく。

ライブ会場が事件に関わってくるので、会場を全体的に活用したメタフィクショナルな観客巻き込まれ型展開があるのも良かった。

演出については、私はあまりに本広演出どっぷりな時期があったから、客観的な感想が書けないので識者に任せるけども。

ステアラを思い出したりしました。回らないけど。

 

●演技について

鈴木拡樹の慟哭と和田琢磨の闇落ちを同時に観られるご褒美みたいな脚本を、観客に感情を爆発させる形で見せていく演技の妙よ…!!!

これに関してはそもそも全く心配していなくて、だからこそ一公演は観てみようと思ってチケットを取ったんですが(実は当初、舞台を観に行くかどうかも悩んでいた)、鈴木拡樹を信じて良かった…結果的にチケット増えたけどまあキニシナイ。以下感想羅列。

 

○鈴木拡樹(九泉晴人)

始まってしばらく、九泉がどこかアンドロイド的な、「過去の見えない」存在に思えて、何故だろうと引っかかりながら観ていたんですが、後半の展開へのフックだったという。謎の身体能力の高さ(監視官なのにどうしてこんなに動けるんだ的な)も伏線になる、アクションも役者としての本領を発揮していて、それが真実を知って惑乱し、こちらの胸も張り裂けそうになるような慟哭をして初めて、本当の過去を滲ませる演技を始めるのめちゃくちゃズルいですね! 知ってた!!!

最終的に火炉と袂を分かつ瞬間の、刑事としての悟性を獲得した輝きが眩しかった。それはシビュラに縋るだけなのかもしれないけどなお。

あと、足癖が悪いのと、殴られてふっ飛ばされる演技の上手さは要チェックポイントかと。やられ役ほど上手くないとリアリティ出ないですもんねえ。

和田琢磨(嘉納火炉)

や、闇落ちサイコ〜〜〜!!!

悪役やりたいと言ってた、というのをツイートで見て、「私も見たいわそんなん!」と思っていたら早々に叶ったという。分析官を撃った瞬間から声のトーンが低くなるのが大変良かった。大城とのシーンで過去を滲ませる演技をするので、余計九泉の過去のなさへの違和感が増すんですよね。間の取り方も絶妙で、上手い役者だなあと改めて。

九泉と嘉納はまごうことなき闇のバディだった。相容れない結末を迎えるところも含めて完璧に私の好み…。

池田純矢(執行官大城)、小澤雄太(相田)、多和田任益(蘭具)、中村靖日(井口)、山崎銀之丞(分析官目白)

映像で拝見していたのが中村さんと山崎さんと映画ハイ・ローで小澤さん、あとは多分はじめましてだったのですが。 

池田さんの大城の熱量が素晴らしかった。まだ26歳というのにもびっくりしたんですが。しかも別に脚本演出もやってるとか、さては天才だな?! アクションシーンもアクロバティックで派手で、華のある役者さんだなあと。

小澤さんは飄々としたどちらかというと陽性の執行官を、多和田さんはヲタ特有の早口が持ち味の元漫画家執行官を活き活きと演じていて、そしてアクションでよく動く動く!

多和田さんの足の長さを十分に活かした足技が凄かった。お二人とも演技も安定していて、冒頭数分でキャラの個性を打ち出せるの大変良かったなぁ。小澤さんと多和田さんのラストシーンはグッと来てしまった…。

中村さんは朝ドラ「ごちそうさん」の印象が大変強いんですが、日替わりらしい中国語の部屋紹介コーナーの面白グッダグダさからの爆弾処理シーンのギャップが素敵でした。なので早い退場がとても惜しい…。

山崎さんは言うまでもなくベテランですが、ラストシーンを締める重い演技が印象的でした。オープンリーゲイの分析官なのはアニメでもあった設定だけど、当たり前のように登場人物に含まれて、それがストーリーの本筋に影響しない時代になりつつあるんだなと平成の終わりを感じる部分でもあり。

 

そして、全員スーツでのアクションなんですが、足が! 長い!!

マナーメイクスマン!!(違います)

このためのフルオーダースーツ衣装とか、お金がry

いや、採算取ること考えていいんだよ…次に続くような作り方しておくれ…。

 

高橋光臣ヒューマニスト・三島)、町井翔真(後藤田)

コパスだと犯人側はどうしても雑に死にがちだと思うんだけど、二人とも爪痕を残す感じのラストなのが良かった。そしてどっしりと怖いんだけど、彼らには彼らなりの思惑があると伝わる熱さと演技がとても印象深い。

 

アクションに目が行きがちですが、実際のところ推理もの&会話劇でもあるので、台詞の量も膨大なら込める感情や物語の伏線も膨大で、役者全員めちゃくちゃ大変だと思うんですよ。それが初日近くで物凄く完成度が高いので、これは大楽には大変なものに仕上がっているんじゃなかろうか。

でも、何度も演じてブラッシュアップしていくのが演劇だと思うし、膨大な情報量をまとった役者がPSYCHO-PASSの世界を表現することで見えてくるものがある、と実感出来たのが私の中で大変大きくて。

そもそも、シェイクスピアにせよ寺山修司にせよ、戯曲から引く場合には身体表現も欠かせない要素だと思うんですが、アニメだとそれを絵が担わなくてはならなくて、その際に落ちてしまう情報があるんじゃないかな、だから役者が演じるPSYCHO-PASSの世界はどんなものだろう、というのがずっとあったんですね。

声優さんの演技力が素晴らしいのは疑いないですが、どうしてもそれだけでは見えて来ない、特に私はアニメの絵から情報を拾うのが苦手なので、だからこそ実写だとどうなるんだ、というのがあり。

それを全キャストが、納得の行く素晴らしい演技と身体表現で見せてくれたので、そこも自分の中ですとんと落ちたポイントでした。演じる度に変化してゆくという意味でも。

PSYCHO-PASSの世界観がアニメで重層的に構築されている今だからこそ、出来る表現なのだな、という部分では物凄く2.5次元舞台だと思います。その上で、脚本演出演技のバランスが高レベルで噛み合っていて、演劇という表現手法で描き出される、シビュラ・システムに支配された理不尽な世界に人が抱く感情を、言語表現とともにノンバーバルな表現で繊細に豪胆に紡いだ役者達にスタンディングオベーションを。

 

とても好きな舞台作品です。出会えて良かった。 

何か書き落とした部分があれば追記すると思います。

 

ということで、令和最初の観劇も舞台PSYCHO-PASSです。新元号でもよろしくお願いします! 多分このブログは平成のうちにまた更新するけど!