ゆうきさらのほんよみにっき@はてブロ

はてなダイアリーから引っ越しました。ゆうきさらが読んだり見たりしたものを気ままにつづります。

舞台 最遊記歌劇伝-Sunrise- 感想

2公演と大楽のWOWOW生放送を見ました。13年間の重みを背負った作品のひとまずの締めを、新参者の私がどう言葉にすればいいのかわからなかったんですが、とりとめもなくつらつらと。ネタバレします。敬称略したり略さなかったり。

 

 

めちゃめちゃ浴びました。なんだかよくわからないけど、演者の熱量に感情が引っ張られて心の中がぐちゃぐちゃになるような。そういえば、コロナ前はこんな風に観劇して、心が動いていたんだなって思い出しました。

大楽の放送が終わってから、引きずられるみたいにずっと録画をリピートしてるし原作を読んでます。これが答えなんだろうな。

 

いやもーステラボールのあの客席のフラットさ、死角があちこちに出来て本当にエグい会場だと思うんですけど、セットに段差がついていたおかげで色々助かりました。

元々ライブハウスだし、2.5に貸してくれるホールの絶対数が少ないっていうことを考えると、文句を言うのも贅沢な話ではあるんですけども。

 

そして、舞台「時子さんのトキ」以来久々に(正直コロナ対策としては何か意味があるとは思えない)役者の透明マウスガードなしの舞台が観られたのは嬉しかったんですが、その代わりに客席全員が(これもまたコロナ対策としては透明マウスガードほどじゃないにせよ効果に疑義がつく)フェイスガード装備で、諸々面倒ではあったんですが、それくらいジャンル2.5次元が各方面に対してエクスキューズしなきゃいけないもんなんだなと多少ブルーな気分にもなり。

確かヒプステも観客全員フェイスガードだったと聞いた気がするんですが、特にミュージカル系はエアロゾル発生の関係なのかコロナ陽性者が出て公演中止になってしまうことが続いているから、色々と神経質にはなっているんだろうなと。

 

これはもうどうしようもないことではあるんですけど、コロナ禍の今に上演時期が重なることは非常に残酷だと思うんですよね。ブロードウェイやウエストエンドみたいに全く上演が出来ない状態じゃないとはいえ、日本の演劇界は役者やスタッフを経済的に支援するシステムがあまりにも脆弱で、だからこそコロナ感染の危険を抱えたまま走らざるを得ない状況があるし、観客も無事かそうでないかを個別に判断しながら観劇するしかないっていう。おのれコロナ。あと日本の演劇界は支援システムを作ってこなかったことを猛省してくれ。こういうときに観客側から一箇所に寄付出来るような団体すらなかったっていうのは大変な問題じゃないのか…。

 

コロナへの恨み節はここまで。

 

私自身は何故か最遊記の原作に関してはかすって来なかった人間で、だからこそ、ファンになって以降、鈴木拡樹の「最遊記歌劇伝を継続させることへの執念」が興味深くもあって。

歌劇伝の初演は2008年で、テニミュという2.5次元の(という言葉も当時はなかったわけですが)先達がいての上演ですけど、今映像を観ると、どうしても構成だったり演出だったりに古さが感じられるんですよね。当たり前ですけども。で、鈴木拡樹や椎名鯛造、唐橋充の最初から最後まで居続けた3人もまだまだ若くて未熟で。

 

過去のインタビューを色々読んでいても、シリーズが2作目で中断してしまったことに言及しているものは物凄く多くて、ただ、正直なところ、「そうか、そんなに後悔が深いのか…」と、私自身は割とあっさり受け取っていたんですが。

 

2019年10月のイベント「いんぷろ」以降、鈴木拡樹は殆ど表に出なくなり。椎名鯛造が座長として立った「最遊記歌劇伝Oasis」上演、長い歌稽古期間(途中死神遣いの事件帖の撮影を挟んでいるにしても、全く浮上してこなかったもんなあ。カフカさんの舞台挨拶も中止になってしまったし)を取って、2020年3月にシアタークリエで何とか上演された「リトルショップ・オブ・ホラーズ」を経て、のSunriseで、ようやく「ああ、このためだったのか」と色々腑に落ちた気がしたんですよね。

 

Sunriseには、2021年に上演される2.5次元舞台としてのポテンシャルが溢れんばかりで、熱量が凄くて、重なる歌声も深くて、繰り広げられる芝居やアクションもレベルが高くて。何より、どのシーンにも原作へのリスペクトが感じられて、「ああ、2.5を観てるな」っていう満足感が深かったんですよね。漫画のコマがそのまま再現されて、「あっこれ原作のあのシーン!」って想起するアハ体験を久々にしました。脚本演出に関しても、舞台ならではのアレンジがいい形で作用していて。

 

この13年間で、特にミュージカル系だとテニミュから帝劇に立つようになったキャストも多いし、他にも映像で活躍したり、何より「2.5次元舞台」という商業演劇のカテゴリが成立して市場も拡大し、「2.5次元舞台」はどんどんレベルが上がっていってると思うんですよね。とくにコミックのメディアミックス展開の中で、おそらく舞台化っていうのはファーストかセカンドチョイスになってきているんではないかというのがあって。アニメもゲームも制作コストが膨らんでいるっていう事情があるにせよ。数の多さが質を担保するわけではないですけど、作られて切磋琢磨されなければレベルも上がらないわけで。

 

その中で、特に鈴木拡樹の立ち位置は大きく変化しているんですよね。

戦国鍋TV(で2011年だからびっくりだよなあ…)やペダステ出演を経て、ストレートプレイの経験を積みつつ、歌劇伝のリブートも挟みつつ。

2016年に明らかにストプレ系の2.5次元舞台の潮流を変えたであろう舞台『刀剣乱舞』の初代座長をつとめて、別スタッフで制作された映画でも主演をつとめて、2.5次元舞台のキングというアイコンとして紹介されることも多い一方で、劇団☆新感線や大型の舞台企画や映像作品のプロジェクト参加も増えてきて。

 

新感線については唐橋充が先に出演していたわけですが、鈴木・椎名・唐橋3名ともに舞台『刀剣乱舞』に出ているのも面白いなと。

 

鈴木拡樹が、どこまで自分の立場が変化すること、立場を変化「させる」ことに自覚的だったのかはわからないけれど、日々前進という地道な、でも難しい目標を掲げた13年間の自分の経験を全て突っ込んだ作品が観られたんだな、という満足感がすごかったです。

 

峰倉かずや先生の体調のことがあるので、最遊記の原作の進行は調子をみながら、という部分があると思います。こればっかりは本当に健康が一番大事なので。

メディアミックスに関しては、2021年にヘイゼル編のアニメ化が発表されて、歌劇伝はもしかしたらその関係でプロジェクトが進んだ部分もあるのかもしれませんが。

Darknessから2年弱、鈴木拡樹が長くレギュラー番組を持って関わることになったWOWOWでの大楽生中継で、歌劇伝名物のメドレーが終わり、役としてのカーテンコールを重ね、最後に座長・鈴木拡樹として挨拶をする場面を、リアルタイムで観られたのは本当に幸せだなと。

感無量な、淋しげな、でもまだ足りない、もっと上を目指せると思っているようななんとも言えない表情を見て、「愛を持って作品に区切りをつけられるのは、幸せなことなんだな」と、ふと思ったりもしました。

 

いやなんかもう、もっと会場で観ておけばよかったっていう後悔が物凄くて、コロナ禍でなければって心の底から思ってしまうんですよね! だからうまく言葉に出来ないし、時間あるとWOWOWの録画をリピってるんですけども!! ミュージカルって考えるな浴びろ感じろの世界だしな!!

 

Sunrise、展開的に三蔵に関しては全くいいところなしだし、ボロ雑巾にされて転がされて悟空から引っ張り出されるのがむしろハイライトなくらいだと思うんですが、ここまで徒手空拳から今の場所まで、おそらく血反吐を吐きながら上って来たであろう鈴木拡樹と、子役から叩き上げて今の場所まできた椎名鯛造の人生そのものみたいで、場違いなくらい底抜けに明るい三蔵一行の歌「Sunrise」を聴きながら泣き笑いしてました。

何気にふっきーさんの八戒とは劇場でははじめましてだったんですが、ふっきーさんの演技はともと好きなので嬉しかったです(ツダケン脚本演出の舞台で拝見しました)。そしてはじめましての平井くん、根は凄く真面目なんだろうなとニコニコしながら観てました。

 

そして、WOWOWの終演後に流れたインタビューで、鈴木拡樹が「ご褒美です」と笑顔を見せた、唐橋充の烏哭三蔵は、私にとっても大変なご褒美でした。いやーーーーーやっぱり演劇モンスター凄い。あの存在感、軽さと裏腹な闇の深さ、観られたの本当に幸せ。あと、バク転出来るとかチートすぎじゃんと思ってたら、体操部出身でもっと色々出来るという話を聞いてさらに衝撃でした。光明三蔵の三上俊さんが歌劇伝にずっと出演しているからこそ見えてくる、月と闇の関係性が深い。

 

ヘイゼル編三部作と銘打つだけあって、このシリーズでの主役はヘイゼルとガトだと思うんですが、法月康平くんの歌の安定っぷり凄かったし、ガトの成松慶彦さんの演技の熱量が凄く良かったなって。ガトの最期のシーン、とても好きです。

 

アンサンブルキャスト名物の女装も健在だったし、どこか懐かしい小劇場系演劇の匂いを残しつつも、2021年版にアップデートされた最遊記歌劇伝は、ここでとりあえずの一段落かもしれないですが、今後も何らかの展開があったら観たいところです。

 

そしてそして。Sunriseを経た今、鈴木拡樹のリトルショップ・オブ・ホラーズとアルキメデスの大戦を改めて観たいなと思う次第です。

 

東宝のえらい人、どうかリスケジュールをお願いします。本当によろしくな!!