ゆうきさらのほんよみにっき@はてブロ

はてなダイアリーから引っ越しました。ゆうきさらが読んだり見たりしたものを気ままにつづります。

舞台『刀剣乱舞』 天伝 蒼空の兵-大坂冬の陣- IHIステージアラウンド東京 感想

コロナコロナで七転八倒した2020年、胸くそ悪すぎて振り返りなんぞしたくねぇわ! と思ってたら2021年も3月に突入しましたが、皆様いかがお過ごしですか?

 

ということで、現在IHIステージアラウンド東京(以下ステアラと表記)にて絶賛上演中の「刀ステ」こと舞台『刀剣乱舞』の感想です。

考察は1ミリもやってません。本当に感想のみ。思うままにつらつらネタバレ感想を書いているので、未見の方はお気をつけください。あと、敬称略したり略さなかったり。

 

なお、このブログは2017年ステアラ髑髏城でステアラヒャッハーがキマっている、脳みそ溶けたバター状態が続く、髑髏城の亡霊がお送りしております。ヒャッハー。

 

 

 

 

 

 

雑感

 

「す、末満健一~!!! そのセット一周百人斬りハチャメチャに見たかったやつじゃんありがとー!!!!!!!」

 

以上! 

いやこのエントリまだ終わらないけど!

 

クライマックスで豊臣秀頼一期一振に投げかける「蒼空の兵よ!」でタイトル回収! 流れ始める荘厳なコーラス! スクリーンが開けば時間遡行軍が押し寄せる中、正面に向けて走ってくる山姥切国広(真剣必殺Ver)! 突然流れてくるラッセラッセイ! 客席回転始まり! からの敦盛やら秀吉の辞世の句やらが謡われる中、繰り広げられる刀剣男士全キャストで動く戦国絵巻っつーか大乱闘刀剣スマッシュブラザーズで脳みそが溶けました。正気はない。舞台作品の大友谷垣コンビかよ末満&アクション監督栗田政明コンビ。

大回転殺陣、「刀剣乱舞」が戦争もののゲームなんだったな、っていうのを改めて思い出しました。戦国時代の合戦の絵巻が実際に動いている、それを表現出来るのがステアラなんだなと。いやすげーわ。

 

ラッセラッセイは「AKIRA」の芸能山城組オマージュですねわかります。
音楽担当のmanzoさんと伊 真吾さんのお仕事。

平沢進師匠成分もあるかもだけど。

そして音響のシンヤさん、ステアラの音響は物凄くクセがありそうなのでお疲れ様です…。

 

照明がTRUMPシリーズだなって思ってたらTRUMPシリーズの加藤直子さんでした。

二部の信繁のアレ…うっ…。

 

ステアラの特徴として、複数面にセットが配置出来るっていうのがあると思うんだけど、クライマックスの大回転殺陣、史実の大阪城真田丸の配置をうまく利用した「俺たち観客が大阪城になるんだよ!」っていうアイデアと、スクリーンフルオープンにしてセット一周回してもきちんと繋がって見える配置を作った上で、殺陣をしながらがっつり見せたるわ! っていう気概がまず好き。いや本当に見事。

 舞台美術の秋山光洋さんの素晴らしいお仕事だと思います。

秋山さん、堀尾幸男さんに師事していらっしゃるんですよね。堀尾さんの舞台美術は個人的に大好きなんですが、秋山さんにはペダステからずっとお世話になってます(ってまるで知り合いみたいな発言だけど違います。ペダステ、舞台セットは基本的にシンプルなんだけど、可動式坂は凄いアイデアだと思ってる)。

本当にありがとうございます。

これまでのステアラ演目って、大体カーテンコールで一周してセットを全部見せることが多かったと思うんだけど、刀ステに関しては、大坂の陣ならではのアイデア勝利というか。

ぐるぐるカテコがないのはちょっと残念ではあったんだけど、あの大回転殺陣が見られたから満足です。いや目をむいたもんな。

 

25jigen.jp

 

 あと、ステアラ演目には巨大スクリーンを活用した映像素材とプロジェクションマッピングが欠かせないと思うんですが、刀ステも刀ミュも担当しているO-beronさんのお仕事素晴らしいですね。特に太閤左文字劇場のネオンサインのマッピング。あんなにちっちゃいのに。

 

そして、ステージアラウンド・スーパーバイザーとして、劇団☆新感線でも舞台監督を務める芳谷研さんのお名前があって、ステアラ新感線観劇経験者としても胸アツでした。

 

キャスト

 

本田礼生くんが素晴らしい主役だなあと。秀頼様役の小松準弥くんと二人で、蒼空の物語を背負っていて。実のところ変更前と変更後の殺陣を両方見ているんですが、変更後の殺陣は虚伝の廣瀬一期の殺陣っぽいというか、腰を落とさないことでフェンシング的な動きになっていて、これはこれで好きです。2部冒頭の攻城戦の殺陣がまるまるカットになったのは残念ですが、腰に負担をかけないためには必要な変更だと思うので。というか殺陣のスピードが早いから、変更してもそんなに違和感はないなあと。

どうか最後までお大事に。ステアラ、動線と裏動線の距離の長さで役者が苦労するっていうの、髑髏のときからずっとあるんですよね…。

何より、演技に熱が入っていて、一期一振と秀頼のシーンは特に熱量が凄いんですよね。20代の役者が多い舞台ならではの熱さがあって、とても良いなあと。

 

個人的な体感として、ステアラは「劇場のギミックが大きいだけに、箱を満たす演技が出来ないと、演目自体がスッカスカに見えてしまう」という非常に厄介な劇場でもあると思うし、実際これまでの演目で「箱の大きさに対して演技(存在感)が足りないなあ」と感じたこともあったんですが、2.5の、演劇プロパーの、しかも大箱経験者が集まっている若い役者が揃うと、最初はちょっと足りないなと思っても、すぐに箱の大きさに適応出来るんだなというのも発見でした。メインキャストはほぼキャパ2000人クラスの箱を経験してるだろうし(ステアラはフルキャパで1300強)。

いや、映像向きの役者と舞台向きの役者とってどうしてもあると思うので、良し悪しではないです。けど、舞台作品で、箱に見合ったいい演技を見せてもらえるっていうのは嬉しいことだなってしみじみ思いました。

 

ソーシャルディスタンスを保つために板の上の人数に制限をつけたりもしていたんだろうけど、ステアラの舞台の広さで距離を保ちつつ、なおかつ客からスカスカに見えない配置や演技をするって本当に大変な時代だなあと思いながらも、1月の公演で感じた「箱を満たす演技の足りなさ」が、2月の公演では感じなくなっていたのがすごかった。

その立役者が本田礼生・小松準弥の両名だと思うし、真田信繁役の鈴木裕樹さんだと思うし、ジョ伝に引き続き出演で、弥助の人生の幕引きを演じた日南田顕久さんだと思うし、属性バーサーカー徳川家康(大好き)を演じた松村雄基さんだと思ったんですよね。

 

というか、下手な役者がいない。みんなうまい。本当に凄い。

阿吽のお二人もだし(桃さんステアラにお帰りなさい!)大事なシーンには常に誰かが板の上に立っている、舞台Kを彷彿とさせる円熟の30代組・荒牧慶彦佐々木喜英松田凌のトリオもだし、今回は割とニコイチな粟田組の弟達を演じる前嶋曜くんと北川尚弥くんもだし、人間キャストの複雑さを引き受ける大野治長役の姜暢雄さんもだし、あの膨大な物量をこなすアンサンブルの皆様もだし。1月と2月を比べても芝居が熟してきてて、これ、大楽のときにはどうなってるんだろう。ロングラン公演の楽しみですよね、芝居の変化。

 

そして個人的MVPは太閤左文字役の北乃颯希くんと加州清光役の松田凌くんでした。

太閤左文字劇場、コメディリリーフ的役回りでありつつも、大坂冬の陣に至るまでの解説をしながら、緊張感を途切れさせずに次に行かなきゃいけない、しかも視線は有無を言わさず太閤に集まるので、スベったら怖い、物凄い重圧のあるシーンだと思うんですよね。あれを容赦ない陽のパワーでやり切ってる北乃くんは本当にすげー。あの太閤相手だったら未亡人オーラ全開の宗三左文字でも女子校の美人なお姉さまになるよね。二振りでキャッキャしてるのかわいかった。太閤の、左文字四姉妹の末っ子感すごい。

個人的に、アイドル出身の子達が舞台に立つときに身にまとう、0番に立つのが当たり前! 的なオーラが大好きなんだけど(生駒里奈とか鞘師里保とかハチャメチャに好き)、そういう役者に太閤左文字劇場みたいなシーンを任せて、きちんと仕事をこなす姿って、実にいい仕事の振り方だしやり方だなって。そしてバーサーカー徳川家康との相性がとても良い…。

 

いやでも、作中の言葉を借りると、確かに健人くんと「同じ匂い」がするんだよね。面白いなあ(どっちも関西Jr出身)。

太閤の明るさこそ蒼空の明るさだな、と観劇の間ずっと思ってました。

短刀の殺陣ってリーチが短い分、手数も動きも大きくなって大変だと思うんだけど、アクロバティックに大胆にこなしてるし。

小夜左文字の納谷くんと並ぶ戦闘シーンを是非見たいので、刀ステのえらい人どうかお願いします。

 

 松田凌(敬称略)についてはもう、流石としか言いようがないというか、何しろ刀ミュの顔である佐藤清光の後発っていう部分でのプレッシャーが物凄かったと思うけど、徹底的な研究と解釈とミュ清光へのリスペクトと松田凌の持つ身体性で、ステにしかいない、最初の一振りでも近侍でもない、初期からステ本丸にいる加州清光を物凄い精度で作り上げてきたなあと。殺陣がステの加州。まんばちゃんとの関係がステの加州。なんだよ「清光」「国広」って。物凄く対等な仲間じゃん。凄いな。

荒牧くんと松田くんが舞台Kで共演してたり、長いこと一緒にラジオをやってきたりとかで、個人的な接点があるっていうのと重なるんだけど、ステ本丸のまんばちゃんに、気のおけない仲間がいて、それが初期刀であるっていうことに、なんだか物凄く安心したんですよね。

加州の名前自体は虚伝のときにまんばちゃんが呼んでいて、確かそれは大楽のみのアドリブだった(のと当時の荒牧くんのミュへのエールだったとかいうコメントを読んだ気がする、ソースは忘れたごめん)と思うんだけど、こういう形で登場させるのは粋だなあ。

個人的には宮崎秋人くんのイメージもあったんですよステ加州。なので、松田凌の名前が出てきたときにびっくりしたんだけど、重心の低い、突きを多様する刀捌きと、熱量の高い演技がぴったりでした。いや凄いなあ。

「生きるってのはそれだけで立派な戦だ」っていう台詞を、労咳で若い主を亡くした清光に言わせるのは残酷ではあるんだけど、その残酷さを吹き飛ばすような「生きるチカラ」が松田清光には満ちていて、これもまたステ本丸における眩しい光のようでした。可愛さよりも力強さにステータスを振っている感じがいいなあと。

いやー、清光、もっと出てほしいし清光主演の話も観たいところ。もーステでもミュでも特命調査やればいいのにね。御前が見たい。あと、秋人くんもどこかで刀ステ出ないかなあ…。

 

維伝以降、ステでは割と明確に「仲間の足を引っ張る仲間キャラ」を出さなくなってきている傾向があるんじゃないかと思うんだけど、天伝はそれが顕著だなと思います。全員が一つの目的に向かっているし、人間キャストも一途に自分の理想を追い求めていて、だからこそしんどさマシマシだなあ、と。

 

 

ストーリー

 

如伝後悲伝前の山姥切国広に「失う覚悟は出来ている」って言わせる脚本家、血の色緑か? 

このときの山姥切国広は、確かに序伝で山伏国広を失いそうになったんだけど、三日月宗近が骨喰藤四郎を通じて山伏国広にお守りを持たせたことで、それを逃れているんですよね。えっぐ。

 

一期一振と秀頼のパートがとても爽やかな葛藤と出会いと別れの物語だっただけに、後から思い出して余計キツくなったんですが!!

 

もともと、維伝パンフレットに刀ステ公演の時系列とステ本丸の顕現順が掲載されていて、今回、冒頭で天伝は如伝と悲伝の間でおそらく无伝の前という提示がされたわけですが。

 

ステ本丸の山姥切国広は、外伝この夜らの小田原で、「写しの物語を背負うのではなく、小田原城で、山姥切国広として山姥を切った」という逸話を背負っている、というのが、天伝を観ている間ずっと引っかかっていて(徳川美術館の関係で、山姥切の逸話と山姥切国広の論文が発表されたのは2020年のようなのですが、まあこの辺は込み入りそうなのでちょっと置いておきます)

 

今回の史実と諸説の話もそうだし、維伝以降初期刀などから繰り返される「歴史を守るのは刀剣男士の本能」という、なんだか据わりの良くない提示を逸脱して、ステ本丸の山姥切国広は、その身に既に「諸説」を背負っている気がするんですよね。諸説に逃がすことを許さない苛烈さと、自らが「刀剣男士として出陣中に、山姥を切るという逸話を背負った」という齟齬が今後どう展開していくのか。

自刃することで刀剣男士を生み出そうとしたが出来なかった弥助や真田の家臣たちと、无伝との関係も気になるところではあり。

 

いやまあ個人的に「刀剣乱舞」というゲームで、刀剣男士が出陣を繰り返すこと自体は、終わらないシミュレーションゲームの体裁としての設定だけで、現状大した意味はないと思っているんですが(今後提示されるならサ終前なんじゃないかなと)。

2015年リリースのブラウザゲーでそんなに設定が盛れるとは…ごにょごにょ。

 

三英傑の辞世の句が流れる中、大回転殺陣でぐるりとステアラが1周した後、燃えた後の本能寺らしき跡で山姥切国広が信長を慕う歴史の亡霊と戦う、それ自体が今後の刀ステの三日月宗近と山姥切国広の物語の構造のメタファなんだろなと。

序伝と虚伝の間が空いているんですよね、物語の順番的に。

 

 私、悲伝の頃から、円環の起点は山姥切国広なんじゃないかとずっと言ってきてるんですけど、講談で語られてきた、物語の中の英雄である真田十勇士と、おそらく真田幸村と呼ばれるであろう真田信繁(を演じる十文字槍)が登場するであろう无伝で、その辺のギミックが語られるのかな、と思いつつ。

 

以下、今後に向けて謎な部分の羅列。

朧んばちゃんの正体もまだよくわからない。今回も頻出ワードだった「物語」、朧の山姥切国広が「物語をおくれ」と呟き続けるのは何のためなのか。

そして鵺の刀こと時鳥顕現と、今回弥助が生み出せなかった刀剣男士までの時間に一体何があったのか。

悲伝初日、三日月宗近は鵺の刀を見て驚いていたんですよね。三日月宗近にとっておそらく初めてのケースだったんだと思うんですけど、何故三日月宗近の円環に途中で鵺の刀が入り込んでくるようになったのか。生み出したのは義輝様なのかそうでないのか。科白劇で三日月宗近と同じことを言い続けていた黒田如水の再登場はいつか。

 

あともう一つ。刀ステでの三日月宗近の顕現順って、虚伝冒頭の不動行光の前なんですよね。

これが序伝のとき、骨喰藤四郎にお守りを渡す三日月宗近なんでしょうけど、序伝と虚伝の間の話で、そのエピソードが出てくるのかな、というのはありつつも。

虚伝の冒頭では三日月宗近はステ本丸の近侍で、山姥切国広に近侍を交代するところから始まるわけですが、ずっと、「ステ本丸では人間の時間でいう何年が経っているんだろう」っていうのも微妙に引っかかっていて。まあここは大して関係ないかもですが。

 

そして、慈伝と維伝の間にもまだ出されていない物語があるようなので、そこでひとまず刀ステの円環は全て描ききることになるのかなあ、とか。

 

まとめ

 

刀ステ✕ステアラって、本当に嬉しい組み合わせだったんですよ。どうしてこんなときにコロナが、というのが心から悔しいです。ステアラ、見づらさは確かにあるし、座席ガチャでもあるんですけど、それを補ってあまりある没入感だと思うし、化け物ステアラの規格に合わせて作品を創り上げてきたスタッフ・キャストの皆様にはただただ敬意しかないです。コロナさえなければなあ。本当になあ!

末満さんも無念なんだろうなと、天伝のパンフレットを読みながら思ったんですが、それでも海風の強い、豊洲市場の前に建っているステアラが今日も回り続けていて、戦い続ける刀剣男士の物語を紡いでいる、そのことにひたすら感謝しかないです。

 

どうか最後まで回り続けられますように。大楽はLVで見る予定です。楽しみ!

そして大楽終わったら別エントリをアップするかも。