ゆうきさらのほんよみにっき@はてブロ

はてなダイアリーから引っ越しました。ゆうきさらが読んだり見たりしたものを気ままにつづります。

幻のシックスマンと開闢の帝王

しばらくまともにはてダの更新をしていなかったのですが、せっかくなのでこの際はてブロに引っ越してみるのもアリかな、と思って開設してみました。

はてダはツイートログ置き場としてそのままにしておくつもりですが、こちらは長文を書きたくなった時に投下する場所にしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

…ということで。

あまりツイッターで呟いていなかったのですが、実はこの2年近く、黒バスに割とどっぷりハマっておりまして。

タイバニと並行して2ジャンルあっちこっちするという忙しい日々を送っていました。

 

その黒子のバスケが、ついに本誌でウィンターカップ決勝の結末の日を迎えました…が。

これまでずっと考えないようにしていたスラムダンクとの関係について考えざるを得なくなった気がするので、忘備録として個人的感想を以下に。

 

ジャンプ本誌及び試合結果に関するネタバレがありますので、ご了承の上お進み下さい。

 

また、以下の文章の前提として述べておきますと、

井上雄彦作品はカメレオンジェイルの時から本誌で読む→スラムダンクも1話~最終回までジャンプで完走、コミックも揃える

●黒バスについては読み始めたのは20巻が出た辺り、ハマってからは本誌を追っかけるようになり、今回リアタイで読了

●どちらもハマって二次創作にも手を突っ込む

ということで、どちらが良いか、という事について語る気は全くありません。どっちも好きなので。あくまでも雑感として受け取っていただけると。

 

 



発売日からあちこちで言われているように、今回、かなりはっきりと、「スラムダンクにそっくり」な構図が出て来ます。

昔からありましたが、見た瞬間に「ああ」と思ってしまうレベルなので、正直読んでいてびっくりしたのですが。

これまで何度も、明らかにスラダンを意識したと思われるコマがあった訳ですが、今回に関しては特に大きな盛り上がりということで、正直デジャヴュを感じて「ああ、もったいないなあ」と思ってしまったのは確か。


黒バスの主人公・黒子テツヤはパスワークに特化した選手です。
それゆえに自分のパスを最大限に活用してくれるFWの存在・火神がいてこそ真価を発揮出来る部分があります。

誠凛対洛山のラストシークエンスで、黒子がキセキの世代・帝光中キャプテン赤司に対し
「ボクは影だ」
と作中で何度も繰り返した台詞が出てきます。
これは黒子の役割の原点に戻る事を示す重要な台詞でもあるし、決着をつけるために
必要な一言ではあるのですが、ジャンプにおける黒バスとスラダンの立ち位置のメタファでもあるかもしれない、と思ってしまい。

言うまでもなく、スラダンは大ヒットし、その流麗で力強い絵柄と大胆な構図、そして心に迫る展開は多くの人の心に残るものとなりました。
今でもジャンプの誇る名作のひとつだと断言出来るでしょう。

一方黒バスは、よりによってその週刊少年ジャンプで、しかもデビューしてまだそれほど時間の経ってない新人の、一番最初の連載として始まった作品。
そもそも比較される事は覚悟の上だったろうと思いますが、これほどのヒットを記録すると想定していなかったのでは、と個人的には推測をしています。
(途中で怪我のため入院していた木吉が復帰し、誠凛のメンバー編成に変更が生じる、という設定変更の時点で、今に至る流れが随分固まったのかな、とは思うのですが)

また、大変残念でやるせない事件も起こり、アニメ化された時に、脅迫への対応のため表立ってプロモーションがしづらかったということもあるとは思いますが、「もっと前面に出る売り出し方があったのではないか」と感じてしまう事が多々あり。

今回に関しても、編集側のネームチェックは事前に入っていると思うのですよ。
で、それでOKを出したのであれば、編集部もその責は負うべきなんじゃないかと。
(この辺の私のスタンスに関してはこちら
思うところあり - ゆうきさらのほんよみにっきを読んで頂けると)

もしスラダンを知らないのであればそれは問題だし、知っているなら知っているで修正指示等の方法を取るという事も出来たのではないかと。
わかってやっているのであれば、それはスラダンという作品が積み上げてきた表現をなぞることで、藤巻氏が独自の表現を切り拓くチャンスを阻害するという事になってしまうわけで。

こういう形で、黒バスという作品に反論のしづらい批判する隙を与えてしまうのは、まだ30歳過ぎたばかりの、新人と言ってもよい作家に対して、あまり好ましいことではないと思うのですね。

ただ、黒バスという作品は、黒子という心の傷を負った陰陽師が、火神という力のある式神を得て、
キセキの世代と自分が、帝光中時代に背負ってしまった憑物をバスケの試合を通して落とすという物語構造も持っていると思うのです。

それを考えた時に、黒子が自分の役割を果たし、火神が決着をつけ、日本一を勝ち取るという展開は、
憑物落としを完遂させるために絶対に必要な展開だと思いますし、ジャンプ連載の少年マンガとしても、「友情・努力・勝利」の三つが揃うという最近にしては稀有な決着をつけたのではないかと思っています。

途中から絵も表現もリアル路線を走り始めたスラムダンクでは、一番の盛り上がりのあと、主人公の花道が負傷し、優勝を逃すという、現実は甘くないという事を突きつける終結をみました。
それはリアルを切り取るということでは納得出来るのですが、少年マンガとしてはとても苦い終わり方でもあったと思います。

ただ、黒バスは少年マンガとして、主人公の勝ちたいという夢を叶えた。
決して才長けている訳でも身体的に恵まれている訳でもない高校生に、努力と友情の力で冠を与えた。

そこがスラムダンクとの違いだと思いますし、今後藤巻氏が新しい作品を描くにあたっての方向性を決めるきっかけのひとつとなるかもしれません。

黒バスは今後、もしかしたら終わるかもしれませんし、続くにしても全く別の路線を進むのでしょう。
願わくば、その新しい展開が、藤巻氏にとっても、ファンにとっても、納得出来るものでありますように。

そして、敗者がそこから何かを学んで成長してゆく藤巻キャラの強さと、キャラクターへのまなざしの厳しさと優しさが、今後も続いていくよう心から祈っています。