ゆうきさらのほんよみにっき@はてブロ

はてなダイアリーから引っ越しました。ゆうきさらが読んだり見たりしたものを気ままにつづります。

ミュージカル「SPY×FAMILY」を観たよ

 随分長いこと更新してませんでしたが、なんと去年の春に家の2階が燃えてしまい、今年の年明けまで避難生活してました。長生きしてたら家が燃えるなんてことあってたまるか!!! いやあったわ!!!

https://note.com/yuukisaranote/n/n152e1fa41650

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 大概色々な修羅場を潜り抜けてきましたが、電話で呼ばれて帰宅したら家から火が出てる光景ほど現実離れしたものはなかったです。リフォーム終わって帰宅して、みんな元気だしねこも元気だし周囲に延焼もなかったので今こうしてネタに出来てますが、今年の春は火事から1年後のフラッシュバックが酷くて寝込み気味でした。

 

 ただ、避難生活しつつも、普通に観劇はしてました。でも流石にブログをアップするだけの気力がなく。しにつかとかアルキメデスとか映画とうらぶとかも観に行ったし楽しかったし呉の大和ミュージアムは凄かったなあ。一時期広島に住んでたけど、呉に行ったのは初めてだったんですよ。

 

 そんなこんなで前置きはここまで。SPY×FAMILY、第一報を見た時、「おっ、最近人気のやつ、2.5を帝劇でやるの? すごいねーでもミュージカルだし私とは縁がないな」と思ってたら、キャスト発表で目玉飛び出るかと思ったSPY×FAMILYです。そこから慌てて全巻読んだらうっかりハマって、今は連載をリアタイで追ってますが、最初に帝劇に行くまで全く現実感がなかった。

 鈴木拡樹推しではありますが、これまで圧倒されたのはストレートプレイであって、ミュージカルに関してはそんなに……というのが正直なところではありましたし、しかも帝劇?! なんで?! っていうのが第一印象でした。ただ、「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」(特にリスケ後のバージョン)を観たときに、これが進化したらどうなるんだろうな、とは思ったので、帝劇は観光客のつもりで(何しろ東京の劇場に行くのは主に世田谷パブリックシアターと芸劇EWとPARCO劇場と今はもうないステアラの人間なので)、メインは気軽に行ける博多座だ、くらいに思っていたのですが。

 結果的に、全キャスト(全組み合わせは流石に無理でしたが)観る事ができました。いやーチケットって増えるんだな……ミュージカル好きな人が多ステするのわかったわーこれは色々な組み合わせで観たいやつ、という感じで。

 前提として、私はグランドミュージカル音痴で、消化酵素がなくて、博多座に来たグランド演目をちょいちょいつまんではいたのですが、大体首を傾げながら出ることが多かったので、元々受容出来るだけのセンスがないです。イケコとも派手に喧嘩するし。観たやつだと四季のアナ雪、ロボットインザガーデン(脚本が長田育恵だったので)、大竹しのぶ様のピアフ、ミュージカル日本の歴史あたりが印象に残ってます。日本の歴史は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のネタ元の1つでもあって、日本の2000年の歴史をアメリカの一家族に接続する叙述トリックの歴史ミステリみたいな話なんですが、観客に物語の持つ情報を圧縮して伝えるのに「歌を道具として使う」のが面白かったんですよね。

スリル・ミーも山崎松岡バージョンは観たけど、あれをエンタメとして消化するにはちょっと重かったな……。つーか、分かりやすくヘテロロマンスが中心に来る作品が苦手で、グランドミュージカルはそこがメインになっちゃうものが多いので、自然にノットフォーミーになってしまうんですよね。宝塚もそうなんですが。いわゆるオフ・ブロードウェイ作品の方が自分の志向には合ってるんだろなと思いつつ、ミュージカル観るよりはストレートプレイを選んでしまうので。2.5だとミュージカルでもロマンスがメインに来るものがあんまりないので、気楽に観られるんですよね。あと、ビッグナンバードーン!! みたいなのがどうにも気恥ずかしいのもあり。エーステとかモリミュとかは配信や日テレプラスで観てるだけですが。

 映画はちょいちょい観ていて、レ・ミゼラブルとかザ・グレイテストショーマンとか、あとDプリンセスものは一通り観てるかな。あとは個人的にデイミアン・チャゼル監督が好きすぎるのでセッションの流れでラ・ラ・ランドを観て地獄に叩き込まれたりとか。映画のウィキッドも楽しみにしてます(四季のウィキッドも来年行く予定)。中指立ててる映画のシシィも楽しみですよ。韓国ミュージカルも興味はあるし、東京行くよりは韓国行くほうが近いので、お金が貯まったら行ってみたいなあ。

 

 こんな感じでミュージカルに対する教養と受容体がほぼゼロの人間なんですが、帝劇で最初にSPY×FAMILY観たときに、まーーーーーー楽しかったんですね。まんま漫画の台詞を旋律に突っ込んでいる上であの膨大な台詞量っていうある意味反則技ではあるし(笑)、子役のアーニャに過剰な負担をかけられない分まで狂言回しの仕事を背負うことになった二人のロイド・フォージャーは段取りも台詞も歌もアクションも大量で、あれを2ヶ月で複雑な盆の機構と出ハケまで含めて叩き込むのは地獄だったんじゃないかと思うんですが(ロイド二人はステアラで座長やってるから複雑な機構に対応した経験があるにしても)、「やることが……やることが多い……!」っていう過剰さがもたらすグルーヴ感が、いい感じで舞台上の緊張感に繋がってたのかなあと。

 そして、作品全体がメタ・グランドミュージカルというか、歌われる感情は全部偽物だしロマンスはどこにもないし(失恋はあれど)ロイドもアーニャもヨルさんもユーリも夜帷も(以下略)全員嘘をついていて、真実はどこにもないんだけど、それでも帝劇の板の上に乗ってて、満員の観客がその嘘を面白がって楽しんでる、その状況のメタさがとても面白かったです。

 

 ウィンくんのロイドは博多座で観たんですが、当たり前に歌がうめぇなと。で、プリンシパルキャストだなーと思いました。キラキラしてた。ウィンくんはウィンくんで、そのスター性が板の上に乗ってて、アニメのロイドみたいなイメージがありました。ミュージカル観たな、っていう感想。で、同じく出自がボーカルの佐々木美玲ヨル回だったんですが、凄くバランスが良かったなーと思いました。観られたの1回だけだったのであとは有識者の感想を見てくれ。印象的だったのは結婚契約という名のプロポーズのシーン。普通にロミジュリ観てるみたいだったな。

 

 で、拡樹ロイドなんですが、ごめん本当に正直、博多座のラストまでであんなに歌が上がると思ってなかったです。焼き土下座。ファンが無理だろうって思ってたものを鈴木拡樹本人は全く諦めてなかったんだなってことに震えました。凄い執念だなと。ずっと歌が上がり続けてた。勿論音の取り方だったりリズム感だったりっていうのはある種才能がものをいう世界だと思うので、努力だけでは埋められないものがあるんだけど(12年エレクトーンやってて全くうまくならなかったマンがここにいる)、歌に感情を乗せる塩梅がとても良くなっていて、それで博多座でガンガン良くなっていったのがアーニャとのシーンと、イーデン校の最終面接だったなぁと。アーニャ4人はみんな違ってみんな天才で努力家で、全員素晴らしかったんですが、アーニャへ余計な情を抱かないようにしよう、っていうブレーキが外れて暴発してしまう、でもそれがきっかけでロイドとヨルとアーニャの疑似家族感が強まっていく、凄くいいシーンに仕上がっていて。拡樹くん前楽の5/20は唯月ふうかちゃんのヨル回だったんですが、二人とも芝居歌でガンガン感情が伝わってくるしハーモニーも綺麗だし、何より面接のシーンの仕上がりがとても良くて、思わず泣いてしまったのでした。

 元々ストレートプレイの部分では、ここ数年特に「うめーなぁ……」と思うことが多かったんだけど、改めて、観客への魅せ方のバリエーションが多いなと思ったのと、間のとり方が特にコメディだと抜群にいいんだなと。そしてネイティブ関西人なのを思い知る(笑)。同じく関西人のけんしんアーニャが同じ間の持ち主でニコニコしちゃった。

ウィンくんの間のとり方と全く違ったので、ウィンくん回を初めて観たときに「えっ同じ役?!」ってびっくりしたのでした。優劣じゃなくて解釈と間と台詞の強弱の位置が全然違うのよ。

 拡樹くん、東宝の仕事だとコメディが多くて、コメディが観たい私は大歓喜ですよ。コメディは上手くないと悲惨なことになるので。もっとコメディやってくれ。なんならヤマコーと「笑の大学」やってくれたら全私が成仏する(いきなり三谷幸喜)。

 そして、父親役が素晴らしく似合ってるので、これから増えてほしい。カーテンコールで必ず膝をついて目を合わせてアーニャ達と会話をしていたのは眼福でした。もっとやって。

 

 佐々木美玲ヨルさんと唯月ふうかヨルさん、瀧澤翼ユーリと岡宮来夢ユーリもみんな違ってみんな良くて、朝夏まなとハンドラーは脚が長いしヘンダーソン鈴木壮麻先生は圧巻の歌声とお茶目さだし山口乃々華フィオナと木内健人フランキーは面白かわいそかわいいし、アンサンブル・オーケストラの皆様も圧倒的で良かったんだけど、梅棒・楢木さんの振付けしたダンスの、博多座3階から観たときのミザンスがとても美しくて惚れ惚れしたのと、ヨルさんのアクション吹替をやっていた依里さんのアクションがとても良かったのは書き残しておきたい。

通常の舞台アクションだとある程度被せを計算して(アクションの相手とは実際当たらないように安全性を考慮しつつ)距離を空けて殺陣つけをしてると思うんだけど、博多座3階から観てたら、拡樹くんと依里ヨルさんのラストの1対1のシーンで依里さんが拡樹くんに当てにいってた(当てないにしてもギリギリまで距離を詰めてた)ので、「おおっ手練れ同士のアクションだ!!」って興奮しました。拡樹くんもステゴロアクションはPPVV以降随分やり慣れてるだろうし。拡樹くんも依里さんも、他の人とのアクションシーンではかなり距離を取ってた(そして配信のときにアクションでリフトやってたのがなくなってたから、多分どなたかの関係で殺陣つけを変更したんだろうなと思いつつ)ので、生の舞台でアクションシーンやるのは大変だと思うんだけど、最後まで魅せるアクションを追求してたのが素晴らしかったなって。依里さんはそのためのアクションキャストだしね。

 

 アーニャ4人はみんな凄くてみんな天才でした。池村碧彩、井澤美遥、福地美晴、増田梨沙の皆さんそれぞれ個性的で、元気いっぱいで、出てくるだけで観客が溜息をつくような華があって。個人的に一番観た、初舞台とは思えないような貫禄のあった「けんしん」福地美晴アーニャと、出てきた瞬間「ダンスがうめえ」ってわかる、そして演技にアドリブぶっこむ(大人たちもちゃんと受ける)増田理沙アーニャのインパクトが凄かったです。リアル子役だと、原作でのアーニャのポジションのグロテスクさが際立つんだけど、それもある程度わかってやってる感じだったし、冒頭でロイド子役と10巻のロイド過去エピソードを出すことで、アーニャとロイドが互いに鏡写しであることがクローズアップされてたなと。ただ、座組の中でのアーニャは、出ハケが大道具に乗せられたままか、大人に手を引かれながらか、ロイドに抱っこされながらで一人になるときがなかったし、もう一人のアーニャが脇役として入って、いつでも交代出来るシステムになってたしで、こちらは安心して観られたなあと。カーテンコールでアーニャが大人キャストたちから愛されてるのを感じてほっこりしたし、前楽のけんしんアーニャラストのご挨拶で、あまりにもしっかりした内容に周りの大人キャスト達が号泣してて、木内さんが気づいて崩れ落ちるのに爆笑してしまった。

 

漫画だと笑える「こいつやべーな」が、実際の人間がやると洒落にならないのがヨルさんだったと思うんだけど、ふうかヨルさんも美怜ヨルさんも、可愛さと恐ろしさとギリギリの塩梅を攻めていて、とても好きでした。豪華客船編観たいから東宝は企画してくれ。

 

瀧澤翼ユーリはわんこ系弟キャラ、岡宮来夢ユーリは割と毒々しさが前面に出てくる方のキャラ立てをしてたんじゃないかと思うんだけど、タキツバは歌にしてもダンスにしてもキレキレで逸材だなって思ったので、今後も色々なところで観たいです。岡宮くんは放っといてもグランドでプリンシパルやるタイプだろうしね。

 

 大楽後に鈴木拡樹FCイベに行って、SPY×FAMILYの振り返りの話を聞けたんですが、「立ち上げだから呼ばれたところもあるかも」っていう話をチラッとしていて、確かに、ペダステ、刀ステと、東宝案件で長く続いてるシリーズの初演立ち上げに関わってるんですよね。

ペダステは海のものとも山のものともつかない状態から初日を迎えて千秋楽は満員、インハイ3日目では当日券待ち1,000人とかいう伝説もあるし、刀ステは刀ステでシアター1010から明治座ステアラとデカい箱常連になってるし、そういう大きな座組で座長をやることに慣れてるのが、プレイングマネージャーとして買われてるんだろなあと。

そして、拡樹くんの東宝本体での仕事を考えたときに、リトル・ショップ・オブ・ホラーズを受けたことが大きな転機になったのではないかと思ってるんですが、出ようと決めたきっかけになったであろうヤマコー(初演シーモア)はちゃんと責任取ってまた共演してくれ。待ってるよ。ヤマコーが家に招待するほど仲良くなってるのなんなの(笑)ヤマコーなら勿論責任取るでしょうけども。

 

5/21、拡樹くんの座長としての最後のご挨拶のとき、いつものように、キャスト・スタッフの人数を紹介して御礼を言う姿に安心しつつ、続けて大楽の配信で、休演なく全部届けられたキャスト全員が揃ってご挨拶をしたのを見届けて、コロナ禍の次のフェイズに移ってるんだな、としみじみしました。勿論第九波は現在進行形ではありますし、今また休演が増えてはいますけど。

 

そしてそして。拡樹くん37歳最後の仕事は半年かけたなかなかな大プロジェクトだったと思うんですが、38歳最初の、三浦宏規くんとのシーモアを超えた初共演楽しみです。で、今の拡樹くんがやる歌劇伝外伝がめちゃめちゃ楽しみ。

 

何より。もし叶うなら、SPY×FAMILYは続編をやって欲しいなあと。豪華客船×いばら姫×ロイドとアーニャののんきな船旅編を待ってます。

本当に楽しかった!!