ゆうきさらのほんよみにっき@はてブロ

はてなダイアリーから引っ越しました。ゆうきさらが読んだり見たりしたものを気ままにつづります。

最遊記歌劇伝―外伝―感想

前回のブログ更新から、腸閉塞起こしかけて1日入院したり、足掛け3ヶ月の転職活動からの次の仕事と引っ越し確定したり、去年の春の火事以降、怒涛の流転人生を送ってますこんにちはあるいはこんばんは(突然のハンドラー)。

このブログは役者のおたくがお送りしておりますので、原作への解像度は低めです。ご了承下さい。そしてとりとめがない。

 

そんなこんなで、刀ステ感謝祭とWhy don't you SWING BY?を観に行った感想を投稿しそびれちゃったりもしたものの(SWING BY?は私の「鈴木拡樹にはコメディに出て欲しい」欲を満たしてくれてサイコーだったし、ペンラとうちわ振るのめちゃくちゃ楽しかったので第二弾是非やって欲しい)

 

ということで、最遊記歌劇伝ー外伝ーを観てきました。東京1公演と大阪大千穐楽を含む3公演。あとは配信の東京マチソワ。結果として、毎日配信を再生する亡霊が出来上がったしアーカイブ2週間観られるのサイコーっすね。今も配信流しつつ本文打ってます。

 

私は遅れてきた鈴木拡樹ファンなので、最遊記歌劇伝については道すがら合流したクチで、原作読んで映像で後追いして劇場で観始めたのはDarknessからなんですけども。

歌劇伝については、「現地と映像の違いが顕著(劇場で観ると情報量も音圧も段違い)」というのをDarknessで身をもって知った&慌てて追いチケしたので、今回はあらかじめチケをなるべく押さえようとしたらなかなか取れなかったりしてヒヤヒヤしました。何とか無事に観られて良かった…。

なかなか押さえられなかったのがステラボールで、何とか取れたのが公式2次先行だったんですが、それで取れたのが2階センター寄りの最後列で。

実際座ってみたら特等席過ぎて震えました。映画館仕様のフカフカ椅子に座ってステージ全体が観られるのサイコー! ステラボールずっと2階にいたい。最近の歌劇伝のセットって機構は複雑だし段差はあるしで、1階だとどうしても死角が出来がちだったと思うんですが、2階はフルで観られて、同時に4箇所で展開される場面を視界に入れられるので、初見の情報処理のしやすさも段違いでした。今回オペラグラスをほぼ使わずに観劇していたんですが、とにかく1箇所で何かが展開する部分が少なかったので、配信も1回くらいは全景で観たかった気はします。全景の見応えが凄い。

なお、ステラボールは私と、デビュー作の雑誌掲載当時から読んでる峰倉かずや作品ガチ勢の友人と、逆にミリしらの友人の3人で観劇したんですが、全員泣きどころが違ったのと、ガチ勢の友人が観劇後震える指で追いチケしてたのも面白かったです。歌劇伝完結前に一緒に観てくれて良かったしきっと追いチケすると思ってた(笑)

 

原作の最遊記については歌劇伝を観る前に読んで、個人的に好きだなあと思ったエピソードが埋葬編と外伝なんですけども。外伝はまさかこんなに泣くか?!っつーくらい号泣して、自分でもびっくりしました。

皆上手かったし、何より、駆け足ではあるんだけど、脚本のまとめ方が素晴らしかったなと。外伝は元々の物語自体が面白いので、ある意味古典の脚本をやるような演目だったと思うんですが、三浦さんの上手い脚本編集と演出と新規にテーマ曲を書き直した浅井さんの音楽、そこに15年間積み上げて来たものが綺麗に乗っかって、さらに新しく来た風の後押しもあって、内容的にはほぼ全滅エンドでありつつも、後口が爽やかな始まりの物語だったなと。ラストに、自分から手を差し伸べる金蟬と、その手を取る悟空で締めたのもあるとは思うんですが。

 

ブワッと感情が溢れちゃって、何から書けばいいのかわからなくなりつつもとりあえずつらつらと。

詳細は峰倉先生のブログにあるので、遅れてきた私が何か言うのは野暮だなあとは思うんですが書く(笑)。

 

千穐楽は現地にいたんですが、唐橋さんが2幕のゲストコーナーに出てきた瞬間のどよめきと悲鳴が凄くて、おそらく誰もが期待していたと思いますし私もそうでしたけど、最遊記歌劇伝に拡樹くんと鯛ちゃんと唐橋さんがいることは、本当に大きくて太い柱だったんだな、と改めて感じました。エンディングで烏哭が歌に入ってきたときに号泣している方がいっぱいいらっしゃったし。

 

大阪については前楽マチソワと大千穐楽を観たんですが、別れを惜しむような感触は前楽の方が強かったかもしれないなと。大千穐楽はいつも通り、きちんと丁寧に魅せよう、っていう意識の方が強い感じがしたので。プロのいい仕事を観たなあ。

そして、観客席でも、役者の演技を余さず見届けようっていう集中力を凄く感じて、観客もまた役者の1人だなっていうことを改めて思いました。

 

外伝は元々悟空が主役の話だと思うし、幼い悟空が1人残されてしまう淋しい結末だとは思うんですが、鯛ちゃんの演技と、その対になる哪吒役のきたむーの演技力が拮抗しているのがとても良くて、何度も「え、演技がうめえ…っ!」と心の中で唸ってました。人は演技力で子どもになれる。悟空も哪吒もある意味被虐待児で、それを子役が負担するのは酷だから、どちらも大人がやるのは必須だったと思うんですが、鯛ちゃんがとにかく演技力オバケだから、同じくらい演劇モンスターなきたむーを持ってきたのは大正解だよなあと。二人ともソロの歌が真っ直ぐ心に入ってきて、とても切なかったなあ。

そして金蟬と対になる、悪の父親役を演じることになった、李塔天役の山﨑さん、とにかく台詞回しが素晴らしくて、シェイクスピア劇みたいな古典を観ているような感触があったのは山﨑さんがいらしたからかも。厭らしさと愛嬌が同居しているのが、余計にDV男みあるというか。

天蓬のふっきーさんと捲簾の平井くん、実は大阪でめちゃくちゃに泣かされたのが平井捲簾でした。情に溢れた優しい兄ちゃんが、幼い子どもを守りたい一心で死力を尽くす姿は泣くしかなかった。鮎川くんの後任でプレッシャー凄かったと思うんですけど、平井捲簾素晴らしかったです。

ふっきーさんは上手い人だと昔から思ってますけど、殺陣こんなに上手かったの?! まあ八戒は戦闘キャラじゃないからな?! ってびっくりしました(笑)いやーー今回狂言回しで台詞多いし歌も難しいし殺陣ガンガンあるしで体力的にも地獄だったのでは。カッコいいオーバー40。

毎回の歌うまゲスト枠の髙﨑くんと佐奈くん、佐奈くんは舞台パタリロで拝見しているんですが、どちらもエモーショナルで良かったなあと。佐奈くんはコメディリリーフもやって大変だったろうなーと。髙﨑くんはペダステの現福ちゃんと聞いて、ガタイの良さに納得したんですが、歌のときの高音部が綺麗で、慈愛を感じました。ラストの悟空を抱擁するシーン特に。そのあとに悟空の頭を撫でてあげる仕草がとても好きだったな。どちらも素敵だったなあ。本当にお疲れ様でした。

ミカシュンさんとうじすけさん、歌劇伝に欠かせない方々ですけど、ミカシュンさんの侍女はぱっと見わからなかったです。流石女優。三蔵一行登場〜GoTo the Westのパートで必要なお師匠ですけど、まあ烏哭出てくるのにあなたがいないわけにはいかないですよねえ…(笑)

うじすけさんも大阪ゲストコーナーで大活躍で、前楽のエンディングで菩薩様にくるりんとまわされてる姿がとても可愛かった。歌劇伝には欠かせないマルチプレイヤー素晴らしかったです。

あの複雑な機構に対応しつつ早着替えしまくり切り替えに切り替え殺陣もダンスも歌もこなすマルチタスクなアンサンブルの皆様もお疲れ様でした。天空の蟻をこのキャストの皆さんで観てみたかったな…!

 

さて。この1年近く、ほぼ歌モノの仕事しか入れてなくて、しかも1つは帝劇の座長で、東宝アニメーション制作の帝劇2.5のトップバッターとかいう、おそらく15年前には想像もしていなかっただろう仕事を経て、満を持しての最遊記歌劇伝最終作で外伝を迎えた拡樹くんですけども。

スパイファミリーから、さらに進化してて驚きました。スパイファミリー博多座のときに「えっ、人間ってどれだけ苦手なものでも、打ち込めばこんなに変われるんだな」ってびっくりしたんですが、そこを超えてきたなあと。歌に感情を乗せてぶん殴ってくる感じが凄かった。

歌劇伝外伝は全体的に「ミュージカルだ…!」と思うことが凄く多かったんですが、そのパートを結構な部分背負ってたのが金蟬だったなあと。1幕の悟空が狙われることに気づく金蟬ソロがめちゃくちゃ好きで。

三浦さん浅井さんもわかっててパートを振ったんだろうし、外伝は悟空が主役の話であって金蟬は座組の番手としては2番手だと思うんだけど、おそらく全部わかった上で、ブレずに引き受けた座長への、最後の餞なのかもしれないなと。

金蟬は残酷といえば残酷なキャラクターで、悟空に見返りを求めない情愛と約束だけ遺して消えてしまいますけど、その愛が大きければ大きい程、悟空の500年の孤独が重くなるし、愛された悟空が記憶を消された中でもよすがにしたものの尊さが見えてくるんですよねえ。大阪大千穐楽、金蟬が悟空に与えた慈愛の大きさに圧倒されました。拡樹くんと鯛ちゃんの15年が垣間見えるような。凄いものを見たなあ。金蟬が笑顔を見せて消えたあと、暴れて泣き叫ぶことしか出来ない幼い悟空がただただ悲しくて。

李塔天を斬るシーン、毎回「初めて人を斬ってしまった文官」の演技が細かいなーと思ってました。金蟬はどう見ても運動音痴だし、運動音痴の演技が細かい。

 

そして。前楽を観ていたときに、とても不思議な感覚になったんですが、15年前の鈴木拡樹が、板の上で演じているのを観ているような感覚になったんですね。

拡樹くん自体は15年分の経験を積んできて、今の立場にある訳ですけど、実のところ、ずっと三蔵を演じることにこだわり続けたのを個人的には不思議に思っていたりもしたんですが、この時にすとんと落ちたような気がして。

 

以下は単なる想像なんですが、初めて最遊記歌劇伝を上演したとき、拡樹くんにとって三蔵は、自分がこれから役者を続けるにあたって必要だと感じた要素を圧縮して固めたようなキャラクターだったのかもしれないなぁと。誰かに対する殺意だったり、演技だったり歌だったり殺陣だったり、何より座組の座長を務めることだったり。三蔵も言ってみれば座長みたいなもんですし。どんなに地獄を見ようと、それを身につけようと足掻いてきて、公演の度に自分の到達している位置を確認するような、三蔵は存在なのかもしれないなと。

で、金蟬は、三蔵を演じる上で必要な諸々を身に着けた上で改めて、「愛以外何も持たない者」を演じるっていう課題でもあったのかな、とか。

美しくて悲しくて一途な愛の話でした。そして長い時を経てまた受け取ってもらえる愛、それを一行が抱いて歌劇伝の最初に戻る、美しい円環を描いて終わったんだな(by峰倉かずや先生)、としみじみします。

 

この15年でおそらく、様々な役者としての経験を積むのと同じくらい、座長として責任を負うっていう経験をしてきていたと思うんですが、外伝で唯一、機構トラブルで中止になった翌日のマチネが観劇日でした。おそらく、その場しのぎの言葉も出せないくらい深刻な状況だったんだろうな、そして自分が「すみません」と言った瞬間にそれは機構の制作や修理に関わるスタッフの方々を責める言葉になるかもしれないと考えたのかもなぁ、と。だからこそ、チケットを取った方々への感謝の言葉しか言えなかったのかもしれないと思うと、この15年で背負ってきた責任の重さの一端を見たような気がします。座長って俳優部の長でもあり、スタッフ含むカンパニー全体の調整役もやってるでしょうから。想像もつかない重責ではありますが。

私も刀ステ悲伝の福岡中止回にぶち当たった側なので、機構トラブル回が唯一の観劇回だった方々の嘆きが我が事のように辛かったので、その時のことと、公演中止が当たり前になったコロナ禍で拡樹くんが座長を続けてきたこととを思い返したりもしました。

 

ラストの三蔵一行の登場のとき、演技プランとして、あえてSunriseのときと三蔵のプランを変えないでやってたんじゃないかと思ったんですが、「歌が全然違う…!」と思った瞬間に、鈴木拡樹が演じてきた玄奘三蔵はもういないんだな、と痛感して、外伝初見のときに号泣したんですよね。今に至る15年の旅の中で、拡樹くんが経験を積んで変わってきたものが自然に現れる演技プランだったなと。

 

いやもう、リトショに出ることの後押しをしたような形の山本耕史(初代シーモア)には感謝しかないんですよ。FCイベントで拡樹くんがチラッと、「耕史さんが(シーモアを)やっていたことが受けるきっかけになりました」と言っていて、多分あそこから拡樹くんの人生がめちゃくちゃ変わったんじゃないかと思うので。ヤマコーは責任持って私のために2人で「笑の大学」をやってくれ。私は拡樹くんの椿一が観たいんだわ。

 

千穐楽の終わらないカーテンコール、嵐のような拍手は凄かったです。愛されて幕を閉じる演目は幸せだな。

三蔵も金蟬も、記憶と記録の中でだけ会える存在になりましたけど、役者を続けてくれればいつかどこかの劇場で皆さんには会えるので。何ならあくたーずりーぐで会えたりもしますが(笑)

きっぱりと「記憶と記録の中でお会いしましょう」と拡樹くんが告げたときに、ペダステで荒北を卒業したときのことを思い出しました。演じてきたキャラクターを愛を持って手放せるってとても大事なことだし、三日月宗近ともきっとそういう別れ方をするのだろう、そして、キャラクターとお別れするときには、互いに最高の笑顔でサヨナラするんだろうな、と思えるような、あまりに美しい結末でした。

 

多分、今年1番好きな2.5…というかここ数年引きずりそうな作品になりました。最遊記歌劇伝外伝、上演してくれて本当にありがとうございました。きっと辛いときやしんどいときに、映像を何度も見返して記憶と記録を引っ張り出す作品になりました。ああ、お別れしたくないな。でも美しかったな。散り行く桜だから愛おしいんだろうな。