ゆうきさらのほんよみにっき@はてブロ

はてなダイアリーから引っ越しました。ゆうきさらが読んだり見たりしたものを気ままにつづります。

「朗読劇 私の頭の中の消しゴム10th Letter」2018年5月3日 鈴木拡樹×増田有華回

 久々の更新ですが、なんと4月の頭にA型インフルエンザを発症して、フル回復するまでに1ヶ月かかりましたよ……控えめに言って地獄だった。

 しかも4月のインフルエンザは2年連続なので、今年の冬からは予防接種を1シーズン2回受けようと思います。しかも仕事もめちゃくちゃ忙しくなったので、予定をいくつかすっ飛ばした上に修羅天魔のLVも諦めたんだけど、なんとか回復した&ありがたいことにご縁があって観劇が叶いました。

 

 以下、感想。

 

 実は一緒に髑髏を観に行った友人が、過去にも「三人どころじゃない吉三」や「Sin of Sleeping Snow」、3年前の「私の頭の中の消しゴム」鈴木拡樹回を劇場まで観に行っていて(というのを今年になって知ったという)、今回の朗読劇が発表されたときに、「消しゴムは絶対観ておいた方がいい!」と言われていて、嬉しいことに3日の楽日を観劇することが出来るようになり。

 こういうご縁は結んでおかないと将来的に絶対後悔するのを知っているので、慌てて飛行機を押さえて東京へ。

 

あらすじは以下の通り。

 

朗読劇「私の頭の中の消しゴム」とは|私の頭の中の消しゴム

 

といっても、記憶は曖昧なんだけど、多分永作博美主演の「Pure Soul」は見ていて、そのときの視聴者の感想もWEBで色々読んでいた覚えはある。

脚本も「ごくせん」「花咲舞が黙ってない」の江頭美智留さんだったなあと懐かしく思い出しつつ。映画は未見。

(ドラマだと浩介と薫の間に子供が出来るから、二人の関係性自体が朗読劇とは随分違った気もするけど記憶が略)

 

 私が観劇したのは2日目にして楽日。

そもそも私が朗読劇を観るのは初めてなので、きちんとしたセットがあることに驚いたんだけど、中央のドアから飛び込んできた鈴木浩介が、ぶっきらぼうな口調で薫の日記を読み上げるところからスタート。

 続いて薫の登場。明るくかわいらしい笑顔の彼女が、実は不倫に苦しんでいて、それを振り切ってなんとか前を向こうとしているという背景がわかったところで、第一印象が最悪だった二人が、少しずつ距離を縮めていく様子が、互いに自分の書いた日記を読み上げることでわかってゆくという流れ。

 親密になるうちに、浩介は母親に捨てられたトラウマを思い出し、薫を突き放そうとするのだけど、二人で葛藤を乗り越えて結婚。幸せな新婚生活を過ごしていたのに、実は……という天国から地獄へと一気に突き落とされ、その果てに浩介が見る光の話、になるのかな。ざっくりだけど。

 

 朗読劇とは銘打っているんだけど、とても演劇的というか、立ち歩いて演技をしているのと変わらないくらいのエネルギーと感情の渦みたいなものを感じる舞台だったな、と思う。5月2日の回では浩介は涙を流していたそうなんだけど(そちらも見てみたかった気もする)、3日は浩介は一度も涙を流さず、心に秘めた嵐のような感情を台詞によって爆発させていて、形として感情を発露させるものがなかった分、私の中にも形を成さないエモーショナルなものが、純度100%で流し込まれたような感じがあった。

 とてもはっきりと輪郭を持って「生きている」男性だったな、と思う。

 浩介が抑制的な分、薫の喜怒哀楽がストレートで、決して「型どおりのいい子」ではあり得ない薫の無意識の残酷さや幸せな環境で過ごしてきたが故の無理解もあるんだけど、それを内包してもなお愛らしくて、こういう女性だから浩介の心の分厚い壁を破って掴み取ることが出来るんだろうなっていう説得力を感じた。

 浩介と薫二人の存在感が素晴らしかったし、特に後半の演技は圧巻だった。いいものを見たなあ。

 

 どうしても鈴木さんの演技についての感想が主になってしまうんだけど、とにかく増田有華さんの演技が好きで。とても巧いと思うし、しかも単なる巧さを超えた感情の生々しさがあって、いい女優さんだなぁと。AKB出身の女優さんって人前に出る場数を踏んでいるせいか、凄く安定しているなっていうイメージがあるんだけど(大島優子さんとか秋元才加さんとか川栄李奈さんとか出したらキリがないな)、今後も舞台やドラマで拝見したいなと思う熱さだった。

 それから、二人芝居なんだけど二人じゃないというか、序盤のシーンで浩介が親方のモノマネをしたりとか、薫の友人と会うシーンだったりとか、そういうところの端々に、閉じていない二人以外の世界が広がっている感じがしたなぁ。うまく言えないんだけども。沢山の人間が二人の周りにちゃんといて、支えられたりぶつかったりしている感じがあって、地に足が着いていた気がする。

 

 鈴木さんの浩介に関してもなんだけど、とにかく生々しい存在感のある演技だったし、台詞の一つ一つが感情の具現化したもので、それを胸の中に直接叩き込まれるような強さと烈しさに圧倒された。

 それゆえに、演技としては抑制的(声を荒げるシーンはあっても涙は流さない、台詞も緩急が効いている)なのが余計効いていたなぁと。ずっと台本に目を落としているから表情ははっきりとわからないんだけど、ページをめくる手が震えていたり、もどかしげに何度もめくったり、時にはぐしゃりと握りつぶしたり、そういう仕草が雄弁に感情を表しているのが印象的。

 あと、決して上手く台詞を読み上げようとするのではなく、とても「浩介らしく」言葉を紡いでいったのではないかなという気がした。時折言葉に詰まったりもするのだけど、ぶっきらぼうできつい言葉を投げかけがちな浩介ならば、自分の書いた日記を読むときに、こんな風になってしまうだろう、というような。

 ただひたすら爆発的なエネルギーに圧倒されて、舞台が終わってからしばらく呆然としていたし、今も熱量にあてられている部分はあるかもしれない。

 

 鈴木さんの2.5以外の舞台を劇場で観るのは髑髏以来2つ目なんだけど、2.5以外の舞台にも色々と出て欲しいなあと思うことしきり。

 「消しゴム」を勧めてくれた友人に観劇翌日に会って色々と話をしていたんだけど、「ベテランの多い重厚なシェイクスピア劇とか出て欲しいよね」という流れに。

 あと、個人的に2人~4人くらいの登場人物で話を回していく、役者の演技力がぶつかり合う芝居が好きだったりするんだけど(役者は台詞多いし出番もひっきりなしでとにかく大変なやつ)(なので「僕のリヴァ・る」の円盤も大変楽しく拝見しました)、そういう舞台も観たいなあ。

 まあ私は三谷幸喜のフィールドの人間なので、そっちに出て欲しいっていうのは何度も書いておく(笑)。それと大河ドラマBS時代劇。映像系だとNHKはなんだかんだ強いと思うので。

 

 まだ自分の中で消化しきれてなくて、とりとめのない文章になってしまったけど、とにかく観に行って良かった。他の組み合わせも観たかったけど時間がなかったので、また観に行けるといいなあ。そして、数年後にまた同じ組み合わせで観てみたいなあと思いつつ。

 

 で、以下はラストのネタバレと自分の個人的な経験に基づくものなので、適当に飛ばし読みして欲しいんだけども。

 去年、薫とは別の病気なんだけど、一昔前の法律用語でいうところの「事理弁識能力を完全に欠いた」母親が施設に入るのを見送った立場なので、正直なところ、浩介が薫の介護を続けていく中で、心折れたことをはっきりと口に出す瞬間の言葉、「疲れた……」が物凄く刺さった。

 病状が進行していくなかで、多分沢山浩介の心折れる瞬間があって、浩介はそれまで必死で自分の心が折れているのを否定してごまかそうとしていたんだろうけど、薫の症状が進行していく中でバーンアウトしてしまった自分を認めざるを得ない、その時の残酷な言葉を、血を吐くような言葉にして表現された瞬間、奥歯を噛み締めて嗚咽をこらえるしかなかった。

 

 でも、バーンアウトを認めた瞬間、多分浩介と薫の関係性は大きく変化したんだろうな、というのもあり。

 庇護するもの、されるもの、という関係がリセットされて、改めて「浩介と薫」という個人の関係に戻ったのじゃないかなと。

 だからこそ、最後の浩介から薫にかけられる「愛してる」という言葉は、純粋に心情を伝えるものとして薫に投げかけられているのじゃないかな、と。

 

 なので、「疲れた……」をあんな風に表現した鈴木拡樹は、恐ろしい、そして凄い役者だな、と、今更ながら思う次第。

 

 また数年後に、「消しゴム」の朗読をしたら、今度はどんな解釈になっているんだろう。その時に観られるといいな。

 

 

 

「江戸は燃えているか TOUCH AND GO」を観てきた

www.parco-play.com

 

あらすじはこちら。

3/3の初日に行ってきた。冬の関東荒野から自分の育ってきたフィールドに戻ってきた感がものすごかったんだけど、そこはとりあえず置いといて。

場所は新橋演舞場。これまで全く縁のなかったハコで、たまたま東京に行くのが決まったときに残っていたのが3階席だったので、とても気軽な気持ちで出かけて、幕間の間にお弁当が食べられるということでおむすび弁当を買って舞台を見下ろしてたら。

 

 繰り広げられるのはめくるめく笑いの世界。ただひたすらにおかしくて、愚かで必死で真面目だったり不真面目だったりする人々の織りなす喜劇にひたすら笑って拍手をしていたら、なんと翌日掌が腫れたという。

勝海舟中村獅童、その身代わりを務めるハメになる一歩引いた目線の庭師・平次にTOKIO松岡昌宏、江戸の未来を憂うあまり突飛な言動で混乱をもたらす松岡茉優にその母親で天然爆発な八木亜希子、長年仕える女中頭であり勝海舟の愛人でもある高田聖子などなど、という布陣なんだけど、まあとにかく松岡茉優のコメディエンヌっぷりが物凄く板についていて。

 「真田丸」「勝手にふるえてろ」と松岡茉優に関しては映像作品での巧さが印象的だったんだけど、舞台上でも美しさとは裏腹の、ある種の狂気に満ちたコメディエンヌっぷりは強烈で、とにかく台風の目だった印象。

 そして今年の大河の題材である西郷どんもちゃんと出て来て、こちらは真面目な役回りを背負っているんだけど、真面目なだけに余計面白いという。

 二幕に向けて怒涛の笑えるシーンオンパレードなんだけど、そこで笑わせるための緻密な伏線と、登場人物全員の関係性がすぐに想像できる座組の密度の濃さが素晴らしかったなあ。

 嘘が嘘と疑惑を呼んだ最後の最後、中村獅童ここにあり! という存在感で話をまとめ、いい話だった……で終わると思いきや。(下記にネタバレあり)

 

 時代考証に山村竜也さん、薩摩弁考証に迫田孝也さんという三谷大河でもおなじみの布陣と、あとどう考えても真田丸のナレーターやってませんでしたかあなた、というお方のナレーションも面白かったなあ。

 

 ひたすら笑って笑って驚いて、最後に時代のうねりを突きつけられる、嘘を題材とした三谷作品もアップデートしているんだなと実感した一作。本当はもう一度くらい観たかった……残念ながら花道は観られなかったんだけど、幕間に食べるお弁当は笑いすぎてカロリー消費したせいもあって、とっても美味しかったなあ。

 新しいパルコ劇場が出来たら、そちらでも是非観てみたい作品。ただただ、楽しかった! 久々の三谷コメディを堪能しました。……といいつつも、ラストでどデカいどんでん返しがあったんだけども!

 

 

 

 

(以下ネタバレ)

 

続きを読む

小林靖子脚本で実写映画化決定ということで、ライト刀ステ勢が「舞台『刀剣乱舞』」のプレゼンをしてみる(3/17追記あり)

touken-movie2019.jp

 

 そんなこんなで前の更新からちょっと時間が空いたんだけど、先週公開された情報で度肝を抜かれてぽかんとしてました。

 いや正直実写化じゃなくてこっちのゲキシネ(っていうと新感線用語だから舞台映像の再編集映画館上映っていうのが正しいのかな)が来て欲しいと思ってたから本当に想像の範囲外だったんだ……。以下敬称略。

 

 で、実写映画が小林靖子脚本ということで、興味が湧いた方向けに、メインキャストを引っ張ってきている『舞台「刀剣乱舞」』(略して「刀ステ」)のプレゼンをしてみます。ゲームに関してはとりあえずプレイしてみてねという感じなのでDMM公式へ飛んで下さい。スマホでも出来るよ。

www.dmm.com

 

 あと、刀剣乱舞2.5次元舞台には2つのラインがあって、ひとつはストレートプレイ版の「刀ステ」、もうひとつはミュージカル版の「刀ミュ」があります。制作会社が違ったりするんですが詳細は割愛。

 今回は刀ステキャストがメインで配役されているということと、私が刀ミュは全部観ているわけではないので刀ミュについては詳しい方お願いします。

 でも、ミュのラインでも実写映画は作りそうな気もするんだけどね。

 ということで、刀らぶファンで2.5次元好きな人は、ステかミュか両方か、という選択肢があるという素敵な状況でもあります。

 

www.toukenranbu.jp

 

 文章の一部はツイートから引っ張ってきたんだけど、絶対的に文字数が足りなかったので色々補足を入れてます。ネタバレはしないように気をつけているつもりなんですが、どうしても本筋にある程度突っ込まざるを得ない部分があるのでご容赦を。

 

 ちなみに私のポジションとしては、ゲームの刀剣乱舞に関しては割と初期に登録したライトユーザー。

 刀ステに関しては「虚伝 燃ゆる本能寺(再演)」、「義伝 暁の独眼竜」、「ジョ伝 三つら星刀語り」を福岡で観劇、虚伝の初演はライブビューイング、外伝は配信で観ています。最初に舞台2種類やりますっていう発表がされたときに「ストプレ版もあるんだーちょっと行ってみるかなー」くらいの気軽な気持ちだったんですが、まあまさか今こんなエントリを書くことになるとは夢にも思ってませんでした……とそれはともかく。

 

  • 「刀ステ」シリーズについて

刀ステは現在5作が上演されてます。

www.marv.jp

 

2018年3月時点では、

(1)「虚伝 燃ゆる本能寺」(2016年5月)

www.youtube.com

(2)「虚伝 燃ゆる本能寺(再演)」(2016年12月~2017年1月)

www.youtube.com

(3)「義伝 暁の独眼竜」(2017年6月~7月)

www.youtube.com

(4)「外伝 此の夜らの小田原」(2017年11月、円盤は5月発売)

www.youtube.com

(5)「ジョ伝 三つら星刀語り」(2017年12月、円盤は4月発売)

www.youtube.com

www.youtube.com

の5作が上演済、6~7月に新作上演予定です。

www.youtube.com

虚伝(初演)のDMM公式配信はこちら。

www.dmm.com

あとはdアニメ等でも時々配信してますが、期間限定配信だったりするのでDMM公式が一番確実かな。

円盤はアマゾンだとこの辺り。

https://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Ddvd&field-keywords=%E8%88%9E%E5%8F%B0+%E5%88%80%E5%89%A3%E4%B9%B1%E8%88%9E&rh=n%3A561958%2Ck%3A%E8%88%9E%E5%8F%B0+%E5%88%80%E5%89%A3%E4%B9%B1%E8%88%9E

 

あと、ニトロプラスから「虚伝」「義伝」の戯曲集も発売されているので、活字が好きな方にはこちらもオススメ。

nitroplus.ecq.sc

なお、虚伝は初演と再演がありますが、脚本や演出等に意図的な差異があるので、別作品として扱ってもいいかなと。

 

  • 脚本・演出は末満健一氏

 刀ステは映画と大体キャストが被るんだけど、最大の違いはシリーズ通して脚本・演出を手がけているのが末満健一氏ということ。

 最近ではアニメ「ボールルームへようこそ」のシリーズ構成と脚本を手がけてます。

末満健一 - Wikipedia

他にも今敏監督の「千年女優」舞台版の脚本演出も手がけているそうです。

10年続いているオリジナル脚本の「TRUMP」シリーズで熱狂的なファンも多いそうなのですが、私はまだ円盤を観ていないので末満ファンの方よろしくな……(ロングパス多い)。

 舞台「弱虫ペダル」を手がけた西田シャトナーさんや佐々木蔵之介さんの所属していた「惑星ピスタチオ」に所属していたそう。

 

  • 刀ステの個人的オススメポイント

 刀ステシリーズのストーリーは各話で独立しつつも連続していて、現時点で刀ステ全体のキーキャラクターになっているように感じられるのは三日月宗近(鈴木拡樹)。

 ……なんだけど、刀ステ全シリーズに出演しているのは山姥切国広(荒牧慶彦)。

 *1

 

 刀ステでは戦国時代を主に扱っていて、虚伝は織田信長、義伝は伊達政宗、ジョ伝は黒田官兵衛と、織田信長に仕えていた外国人「弥助」が物語のキーになってます。内容は時々笑わせるところを挟みながらもかなり重厚でシリアス。そして刀剣男士が活躍する殺陣のシーンが圧巻です。

 といいつつも、かなりSF要素が強いので、実は特撮ファンにとっても面白い物語なのではないかなとずっと思っていて。

 時間を題材にしたSFのストーリー構成。そして結構な鬱展開だぞ!

 なおかつ、ストレートプレイとしても見応えがあって、「虚伝」は「ゴドーを待ちながら」という不条理劇をベースにした構成。

 というのも。

「同じ戦場に何度も出陣しなくてはならない『刀剣乱舞』の世界観と、同じ演目を繰り返さなければならない演劇の構造の、面白いミックスになったのではないか」(戯曲 舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺後書より引用)

 上記の構造に対して、自覚的に物語を構成して脚本を書いているように思われるんですね。

 「虚伝」「義伝」「ジョ伝」ともに、刀ステでは「時間の経過」が物語の大きなキーになっていることが多く。

 歴史ものとしての見応えは勿論あるんですが、それ以上に、最終的に明らかになる仕掛けがとてもSF的だし、ニトロプラス作品的。

 それが、同じ脚本を使って何度も舞台で上演をするけれど、劇場や役者の演技、その時に起きる有象無象の事態によって、一つ一つの公演が完全に同じように演じられる訳ではない、という「演劇だからこそ実現しうるループものの構造」がメタフィクショナルに実現されることをわかっている構成をしているのではないかなと。

 特に刀ステは基本的にロングラン公演前提でスケジュールが組まれているのもあるので。

 他にも、ゲーム内で実装されているシステムがあちこちでストーリー展開に組み込まれていて、刀剣乱舞のゲームシステムを説明しつつ、ゲームを知っている人には「おや?」と思う仕掛けになっていたりします。

 

*2

 

 そして、末満氏は歌舞伎好きだそうで、番傘を使用したキャストパレードは白浪五人男な雰囲気の演出を意図的に行っている様子。

 他にも歌舞伎を思わせる演出がちょこちょこあり、溢れるケレン味も特徴の一つかと思います。

 刀剣男士が横一列に並んで名乗りを上げるシーンはめちゃくちゃかっこいいし燃えるぞ。

 

  • まとめ

 ということで、刀ステはかなり特撮ファンに馴染みやすい構造なのではないかと個人的に考えている訳です。

 (正直なところ、末満氏にライダーの脚本を書いて欲しいとずっと思っているんですが、いつか実現するといいなあ)

 そして何より、剣戟ものとして楽しめる、激しい、そして魅せる殺陣の連続です。

ということで、時代劇が好きな人には特にオススメしておきたい。

 2.5次元舞台は結構な割合で歴史ものや殺陣が見せ場のメインになっている作品があって、個人的に、テレビドラマでは製作数が少なくなっている時代もの・剣戟ものの時代劇の流れを継ぐのではないかと感じているんですね。

 若い俳優陣が見せるための殺陣を習得していく様子はなかなか見られるものではないですし。

 そして、若いお客さんが殺陣を見て「かっこいい」と思う機会を作れるっていうのは本当に大きいのではないかなと。どれだけ剣戟ものを作っても、肝心の楽しんでくれる観客がいなければ意味がないし。

 2.5次元舞台はまだ新しい演劇の形態だけど、役者・観客ともに育っていく面白い分野でもあると思うので、新しいうねりを体感するなら今だと思うよ!

 

 Gロッソに行くくらいの気持ちで気軽に観て欲しいです。いやまあチケット取るのは大変だけど。

 

 夏の新作は50公演以上あるロングラン、そしてキービジュアル的にもおそらく三日月宗近がメインになってくる話だと思うので、是非観て欲しい…と言いつつもチケット取りが激戦なので、取れなかったらライブビューイングか配信で観るという手もあると思います!

 

 あと最近、CSの日テレプラスでもたまに放送してます。

www.nitteleplus.com

 

  • 以下は余談

 個人的に2017年末に上演された「ジョ伝 三つら星刀語り」は脚本構成が出色の出来だと思うので、機会があればどこかで観て欲しいなあと。二部構成なんですが、演劇でしか出来ない時間ものSFの真髄を見た感じでした。

 そしてこのブログの他のエントリではダダ漏れなんですが、「虚伝 燃ゆる本能寺(再演)」は初めて鈴木拡樹の演じる三日月宗近を劇場で観て、「人間じゃないものを観た……あそこに在るのは刀だった……なんだあれ……」と打ちのめされた作品でもあり。

 鈴木拡樹は元々映像からデビューしているし、「仮面ライダーディケイド」ではブレイド役で出演もしていますが、ディケイドしか知らない人は多分今の鈴木拡樹とあんまり結びつかないんじゃないかなあと。というか私はすぐには結びつかなかった。

 本人の努力の賜物だと思うんですが、色々な舞台で座長経験を積んできたのはものすごく大きいんだなあとディケイドを最近見て感じたのでした。

 どうやら今現在撮影をしているみたいですが、劇団☆新感線「髑髏城の七人」ロングラン公演を終えて、一体どんな三日月宗近が観られるか楽しみです。

 そして鈴木拡樹個人のインタビューを幾つか読んだんですが、どうやらある程度末満氏から刀ステシリーズの流れを聞かされた上で現在の演技プランを作っているっぽいんだよなあ……夏の刀ステは豊臣方になるのではないかと思っているので、一体どういう流れになるのか気になるところ。

 

 他の刀ステ~映画での同一キャストの皆さんも、舞台中心で活躍しつつ、映像出演経験が多めの役者さんを引っ張ってきているから、発表されたキャストを見たときに「ああ、なるほどなあ」と納得したのでした。そして下弦月髑髏の天蘭だよ……まさか二人で刀になるとは……涙目。

 そして荒牧慶彦は台風の目になるのではなかろうか……刀ステでの1年間観ただけでも成長が凄まじいので。

 

 刀ステと映画は別の本丸の話のようだし、「この作品の本丸はこれだよー、あなたの好みで一番好きな本丸を選んでね!」と出来るのが刀剣乱舞派生作品の最大の強みだと思っているので、同じ演者でパラレルワールドになりそうな予感がひしひしと。

 役者さん達にとっては自分たちの演技力を試される大変な挑戦だと思いますが、2019年がとても楽しみです。

 そして靖子にゃんの書く全力の剣戟もの脚本を待ってます!!

 

 

そしてこのエントリを書くにあたって以下の特集を参照しました。

www.bijutsu.press

青土社 ||ユリイカ:ユリイカ2015年4月臨時増刊号 総特集=2・5次元

以上! ざっくり書いてるので、間違い等あったら教えて下さい。」

 

3月17日追記:夏の刀ステ新作は足利の話なのでは、というツイートを拝見し。

登場する刀剣男士は足利義輝に縁のあるものが多いのですねえ。なるほどなあと!

ありがとうございました!

 そして刀ステ過去作紹介部分に公式YouTube動画のアドレスを貼り付けました。

PVだったり円盤告知だったりしますが、詳しくはYouTubeマーベラス公式チャンネルを見て下さい。

 

*1:まあ三日月さんは冬に髑髏城に出張してたから仕方ないんですが。

*2:余談。「ジョ伝」前楽を劇場で観劇したとき、一幕で山姥切国広がへし切長谷部達とばったり会うというシーンがあるんだけど、大楽のライブビューイングで観たら、そのシーンは山姥切国広と山伏国広二人のシーンだったというのがあり。「あれ?」と首を傾げていたら、本来は二人のシーンなのに、前楽の時に山伏の出トチリで仕方なく山姥切国広一人で出て、その場で脚本の末満氏が後々矛盾が出ないように脚本を変えた、というエピソードがあったんですね。同じ脚本でも、偶発的な出来事で舞台は変わりうることの傍証というか。

髑髏城の七人Season月【上弦&下弦LV】と【下弦の月】3回目を観に行ってきた

1月13日に2回目を観たあと、23日と24日の上弦下弦ソワレLVと、2/5の下弦をステアラで観てきた。以下敬称略。そしてネタバレしかないので要注意。

 

上弦はステアラのチケットを何度応募してもダメだったんだけど、LVでようやく私の月が満月になった……これで一安心。

で、風・月上弦(LV)、月下弦(会場とLV)ははっきり観てきたと言えるんだけど(ゲキシネで観たのは何か覚えてない……)、結論としては「みんなちがってみんないい」だなあと。向井理の蘭兵衛も好きやで。脚本の構成がシンプルな一人二役版もいいなあ。

上弦に関しては、「顔がいい……」とひたすら画面を見つめてた気がする。顔がいいって物凄い武器だと思うし、だからこそ映像で観て良かったなあと。あと、各役者の個性を出すことで見せ場をガンガン繋いでいくのに物凄く新感線ぽさを感じた。

早乙女天魔王は流石の所作と殺陣でした。若いのに凄いなあ。

個人的に印象が強かったのは須賀健太の兵庫。最後の太夫とのシーンはとっても可愛らしかったよ……年の差を若さで乗り越えようとする強さ最高だったなあ。

あと、上弦は全体的にどこかダークな空気が消えないのと、蘭兵衛が思ったよりもゴリラな雰囲気があって楽しかった(ほめてる)。いやどうしても下弦ベースになっちゃうもんですみません……。

私が上弦をこれ以上語るのは野暮な気がするので止めとくけど、上弦下弦どちらも、将来有望な役者さん達が揃っていると思うので、どうか色々な場所で満月を見せて欲しい。

 

さて、下弦感想。

LVと2/5の間が2週間程しかなかったんだけど、かなり変化があったように感じたのと、何より2/5がまさかの実質最前列で役者さんたちの表情がオペラグラス全くなしで観られるという、チケット運を全部使い果たしたかのような席だったので一緒に語っておく。

12/4の公演後にどうしてもリピートしたくて戻りチケットを取ったんだけど、まさかこんな席が来るとは思わなかったよ……ステアラちゃんがお恵みをくれた…一番端だったから死角になる箇所はあったんだけど、塩素の匂いはするし役者さん達が武器を振れば風が吹くしなんなら舞台が揺れるのも伝わるしで目を白黒させながら観てた。

yuuki-sara.hatenablog.com

yuuki-sara.hatenablog.com

一応過去ログも貼っておきます。

 

 で、LVから。1/13の時には増えてたアドリブが、LVだというのにさらに好き放題やってる感じになってて、一幕の間は大丈夫かこれ、と爆笑しながら観てたんだけども。

 鈴木天魔王が時折軽さを出しつつ締めるところを締めていて、二幕頭の口説きのシーンがとにかく圧巻だった。

 そして廣瀬蘭兵衛が無界屋を離れるときに微笑んで一礼したりとか、蘭丸覚醒してから、殿の骨をしゃぶってたりとか、自分の顔を刀に映して紅を引いたりとか、観たかったシーンを大体抜いてくれていて、大変眼福でしたよ……。あれ、蘭兵衛ばっかりだ。おかしいなあ。いやまあ舞台観てるときは天魔王に視線が行っちゃうんだよ(言い訳)

時々カメラワークがバタついてるなっていう部分もあったけど、いずれうまく編集されて、ゲキシネやDVDになってくれることを期待しつつ。

 あと、天魔王が「天は私のものだ」と言ったあとに投げキッスするところな……。よく抜いてくれたよ……。

ソワレ蘭丸はラストで唇からも血を流していたんだけど(倒れたときに切ったのかな……)太夫が息を引き取った後に掌だけでなく唇も拭ってあげていて、そこで号泣してしまった……実はそれまで、髑髏城という演目でガチ泣きした事がなくて。むせび泣いたことはあったんだけども。しかもリピート鑑賞している演目で。自分の心の動きにもびっくりした。

 そして、常に下弦のど真ん中には宮野捨之介がしっかり立っていて、けれども一人で立っているのではなくて、常に誰かとの関係性の中で他の誰かが浮き上がってくるという不思議な連帯感があって、とても安心して観ていられるなあと実感したのがこの時。

遠慮なく笑って泣いて楽しんで、「ああ、いいお芝居を観た!」といい気分で会場を後に出来る作品なんだな、と。

 

 そんな信頼感のようなものを持って挑んだ2/5。結論から言うとLVからさらに進化と深化をしていて、正直びっくりしたし、最後まで全公演観られないことが悔しい、と改めて思った。

 2/5公演で印象が強かったのは伊達渡京。立ってるだけ喋ってるだけで面白いどういうことだ……?! これまでも面白かったんだけど、印象の強さが違ったし、二幕で霧丸と組んで剣布をだます展開が、霧丸の棒読み具合も相まっておかしいのなんの。

 そして、現在の捨之介、蘭兵衛、天魔王から、8年前の、さらに言うともっと過去の三人と、それを繋いでいた織田信長が見えてくるという不思議な感覚に陥り。

 

 二幕で「天は私のものだ!」と断言し投げキッスを送る鈴木天魔王は、実は織田信長のマントにすら触れることが出来なかったのではないのか、とそのとき初めて思ったんだよね。

 深い深い孤独。狂気に満ちた崇拝。それは人間に対してのものというより神を崇めるようなものではないのか、というのを12月に観たときから考えていたんだけど、投げキッスって直接キスが出来ないからこそ送るものでもあるから……。

 

 以下個別感想。正直舞台が近すぎて正気を保てなかったので、死者の繰り言だと思ってくれ。

 

宮野捨之介ーマイクオフの声が物凄くはっきり聴こえてきたんだけど、まあよく喋るし他の役者さんの台詞や行動にきっちり反応していて、舞台のライブ感はマモ捨だからこそなんだな、と改めて。表情もくるくる変わるし、板の上に立っていてとても楽しそう。

 兵庫の日替わりアドリブ「ズラしまたろう」をガンテツルームで拾って、贋鉄斎が「あっはっは!」と笑ったもんだからこっちの腹筋も崩壊してしまった。

 かと思えば、二幕後半の捨天対決のとき、天魔王を止めきれずに縮こまって慟哭する様子があまりにも痛々しくて、そして後半になればなるほど息が荒くなる、苦しそうに喘ぐのに台詞はきちんと耳に入るというトップ声優の妙技を堪能。

 本当に凄い声の演技だと思う。宮野捨之介の最大の武器は感情が余すところなく全て詰まった声だと個人的には思っているので、それがさらに研ぎ澄まされているのに目を見張った。

 実のところ、宮野さんのアニメでのデビュー2作めの「WOLF'S RAIN」をリアタイで見て「ふーん、声優デビューしたばっかりなのか」なんて思っていたんだけど、今こうして、舞台で主役をやってる宮野さんを観ることになると思わなかったから不思議な感じ。

 殺陣も大きな身体を活かしたダイナミックなものになっていて、魅せ方をよくわかってるんだなあと。もう一つの武器である歌を今回の舞台では封印しているから、機会があればミュージカルでも観てみたい。でもマモ捨好きだよ……飄々としてどこも痛くなさそうなフリをしているのに実は脆いマモ捨本当にいいよ……。翳った太陽を支える松岡霧丸がまたいいんだよ……。

 

松岡霧丸ー捨之介と対で書いた方がいい気がしたのでここに。喜怒哀楽のはっきりした元気な役どころは変わらず、捨之介だけでなく他の登場人物との関係性が深まって、ラストにシルエットで見せる「髑髏城の七人」の縁を繋ぐ存在としての強さを見た。そして元気だしめちゃくちゃ動きが機敏。スケボーで移動しているところがとてもカッコよかった。

 そして髑髏城脱出のときに、ボロボロの捨之介を支えて、ずっと肩を組んで戦って、さらに崩折れた捨之介を軽く抱き寄せて元気づけるシーンがとにかく男前で、下弦は復讐心に囚われた少年の成長譚としても味わい深い……。とにかくまっすぐで、捨之介に降りかかる死の影を追い払えるのはこの子しかいないっていう説得力が凄い。沙霧という女の子から霧丸という男の子に変更された理由が見えるというか、月の百人斬りは捨之介ー霧丸ー贋鉄斎のコンビネーションが最高なので、少年漫画の主人公ド真ん中の霧丸はとても気持ちいい。

 松岡くんがまだ20歳なのも衝撃的だし、ナルトでは海外公演も経験してたと思うから、経験値としては十分過ぎるくらい積んでるんだよねえ。将来超有望だなあ。

 

廣瀬蘭兵衛ーとても優しい、優しいが故に太夫の広い愛に自分の情を重ねて生きて、でも信長への愛を忘れられなかった人なのだな、と思う。

 一幕の無界屋はまるで楽園のようで、太夫と二人並んで楽しそうに喋っている姿は仲睦まじくて。遊女とハイタッチしているのもかわいかった……。兵庫が割って入ろうとして失敗したりもしていたけれど、マイクオフで二人で話している姿があまりにも尊くて眩しかっただけに、二幕の無界屋襲撃は、自分が逃げ帰る楽園を壊して退路を断つための儀式のようなものだったのかな、と。

天魔王に口説き落とされて美しさを増す瞬間にゾッとした。凄かった。

 低くドスの効いた声を出す場面が増えていて、儚さは薄れたのだけど、その代わりに一幕でとても楽しそうにニコニコと微笑むから、蘭兵衛として確かに無界屋を愛していたはずなのに、と二幕で「なんでそうなった!」と絶叫する太夫に同調してしまう……。

 でも、愛しているから壊したくなる人なのかもしれないなあと。

 そして、捨之介とはそれなりにいい関係を築いてきたんだろうな、というのが、捨之介→蘭兵衛への頭ナデナデ、以外にもちょこちょこと二人のやり取りから見えて、余計二幕がしんどかったよ……。そりゃあ捨之介、兄弟みたいにかわいがってた蘭兵衛にいきなり襲われたら身体以上に心が辛いよねえ……。

 友人が反対側の端から観ていたんだけど、無界屋襲撃のシーンで「蘭丸がとても哀しい目をしているのに口元は楽しそうに笑っていて、観ていてゾッとした」と言っていて、それ超観たかった……!

 あと、殺陣が素晴らしかった。物凄く綺麗だった。目を開けたまま事切れて、捨之介が目を閉じさせてやるシーン大好きだよ……。太夫が拭ってくれた手は血が取れただろうかと思いながら泣いてしまった。

 

はい、飛ばしてる人がいるけど、長くなるのでラストに持ってくるよ!

 

羽野太夫ー大好き。下弦の要だと思う。この人が可愛らしくてかっこよくて強くて弱くて素敵だからっていうのも、私が下弦を好きな理由の一つで。霧丸に対しては母親のように、蘭兵衛に対しては妻のように。捨之介に対しては太夫らしく接して、兵庫に対しては友人以上恋人未満の上手い距離感を保っていて、というバランスが、二幕で崩れてしまってからの絶望の演技が凄まじくて。

 無界屋襲撃のときに、みんなが事切れた後くらいからずっと泣いていて、でも必死で抵抗しようとする姿は美しかった。そして二幕の兵庫に守られるシーンで、兵庫と手をつなぐのがとても尊い……私は太夫には何があっても幸せになって欲しいよ……兵庫全力で幸せにしてやれよ……。

 ラストの場面で、霧丸が太夫に「ありがとう」っていうのがとても好き。二人でハグするのも、互いに大切な人達を喪ったけれど、それでも新しく大切な人を手に入れた同志がする激励のようで。

 羽野さん本格復帰舞台を観ることが出来て良かった。

 

木村兵庫ーとっても安定感と侠気があって、台詞回しも軽妙で、かと思えばアドリブで大やけどしてマモ捨と二人でガッタガタになっていたりで、最高のアニキ。荒武者隊(荒武者隊の日替わり歌は「むっかっいのさとだね~♪(プリンセスプリンセス・DIAMOND)」)と一蓮托生だったのが、太夫と同じように大切な人たちを喪って、改めて太夫と同じステージに立ったときに、二人の関係性も変わっていくっていうポジションの変化も含め素敵だった。一幕のペースメーカーはまさに兵庫だなあと。一幕二幕どちらとも、おっとういん平さんとの掛け合いが最高オブ最高で、おっとうの謎ヨガっぽいダンスからの日替わりは毎回ネタ考えるの大変だったと思います……。あとちょっと頑張って……!

 太夫へのプロポーズ毎回泣くんですが、今回はおっとうとの掛け合いのシーンが目の前だったので、そこで既に泣いてしまった……おっとうの服、荒武者隊の服をかき集めてるんだよねえ……。

 

伊達渡京ーあのー、近くで観るとめちゃくちゃイケメンなんですが! いや基本イケメンしかいないけど!! 一輪車すごい勢いで漕いでたよ!

 存在してるだけで面白いのズルい!! 好き!!

渡京さんは日替わりがあんまりないから、今からぶっ込まれるんじゃないかとヒヤヒヤしてるんだけど、剣布ちゃんとのシーンでの「吐け(刷毛)ー」に今更気がつきました。ダジャレだったのか。

 

中村贋鉄斎ー一幕一番の尺取り&笑いどころ。前期と比べてランタイムが10分くらい増えてるんだけど、面白いから仕方ない(笑)

 マモ捨との掛け合いが最高に面白いんだけど、特に面白いことを言ってるわけじゃなくて、マモ捨が何気なく「ボソッ」と言ったことに二人も客席も耐えきれなくなって爆笑する感じがあるなあ。いや中村さんも面白いし、生駒ちゃんの潔癖症日替わり(この日は「この際だから言わせて下さい、ポンジュースのプルタブが缶の中に入ってジュースに浸かるの無理、考えたのアメリカ人?」→贋鉄斎丸無視。そしてポンジュースのある髑髏城とは)も最高なんだけど。

 でも二幕に入ってからのシリアス展開がとても良いし、中村まことさんいい声してるんですよね……。猫ホテも観に行きたいなあ。阿佐スパも観てみたい……。

 

 鈴木天魔王ーさて、トリです。長いです。

 12月、1月、2月と観てきて、表層での変化はあれど、安定感が凄まじかった。捨之介と蘭兵衛が変わるにつれて対応する演技は変わるんだけど(例えばラストの捨天対決での表情の深まり方だったり、蘭兵衛の芝居が重くなるにつれて天魔王の口調が軽くなっていったり)あくまで三人のイメージが重ならず、対照的になるように、という方向での変化だった気がする。メイン三人のバランスを終始考えていたイメージがあるんだけど、かといって本人の演技がおろそかになるのではなく、胸に刺さる具合は観る度に深くなっていってた。

2/5は冒頭シーンから呑まれて、一幕の途中あたりで、捨之介達に抱く自分の感情を振り返り、「あれ、自分、もしかして今、天魔王の気持ちに同調してるのか……?」と気がついてびっくりしたくらい。一幕は冒頭と途中のシーンしか登場しないからまだそうでもないんだけど、二幕の口説きのシーンあたりから、正直台詞に呑み込まれるというか、蘭兵衛が蘭丸に堕ちてしまうその瞬間に同調させられるような、暴力的なまでの引力があって。蘭兵衛に対しては最初、軽妙な口調で髑髏城の現況を説明するんだけど、そこから信長のことを引いて蘭兵衛を口説き落とす様子に、蘭兵衛と同じように「やめろ……やめてくれ……」と心の中で呟いていた気がする。

 とにかく、登場すると、その場の他の登場人物にはない異物感というか、異質な存在感にぞくりとして、けれども目が離せなくなるという。

 そういやこれ舞台刀剣乱舞を一番最初に会場で観た時にも同じ思いをしたわ……。

 だからといって自分だけ目立とうとは一切していないというか、むしろスポット来ていないときに気配を隠す感じは、前期に観たときよりもはっきりしていたと思う。他の人物に目線を誘導するような動きもあるのかもしれないなあ。だからといって演技が消えるのではなく、舞台の上では常に天魔王としてそこにあるんだけども。

 LVからずっと表情が観られる状態だったんだけど、とにかくまばたきをしない。ずっと目を見開いてる。視線を落とすときにはまばたきをするんだけど、顔を上げて、カッと見開いた目に睨みつけられると身体が竦むっていうのを初めて経験した。

 あと、表情がとても歪。そして、捨之介や蘭兵衛が「仲間」という度に嫌そうな表情を浮かべるのは、きっと面白くなかったからなのだろうと。

 八年間、天魔王はきっと真面目に努力を重ねて今の地位にあったのだろうけど、蘭兵衛に髑髏城を任せようとし、捨之介を天魔王の身代わりにしようとした彼は、天魔王であることを「捨之介」のように捨てたかったのかもしれない、と思い。下弦では天魔王は蘭兵衛の目を斬るんだけど、それも、蘭兵衛の目に(記憶に)残った自分の姿を消したいという願望があるからなのかな、とか。

 マイクオフの鈴木天魔王が、「捨之介……捨之介……!」と昔の「地の男」ではなく、捨之介が自らに与えた名前を呼び続ける、それは羨ましさと表裏だったのかもしれない。

 そして焦がれた天はとうの昔に落ちた。天魔王に部下はいても仲間はいない。蘭丸は自ら仲間を殺し、蘭丸自身も斃れ、意趣返しは出来たかもしれないけれど、蘭丸に庇われたことで心にヒビが入り、最終的に捨之介に鎧を剥がされ追い詰められるその姿は、自らが招いたこととはいえあまりにも惨めで、憐れで、だからこそ、天魔王は捨之介が一旦引いた刃で、とても衝撃を受けたような、悲しさすら感じる表情を浮かべたあと、強引に自らを貫いて、「偽物の天」すら止めようとした捨之介への意趣返しをしたのかもしれない、と思わされ。

 

 退場のシーン、背後から光を浴びる中、天魔王の口元にどこか嘲るような笑みが浮かんでいるように見えて。もしかしたらそれは私の勘違いで、実は違うのかもしれないけれど、それを観られて本当に良かった。

 髑髏全部を観ていない私が言うのはアレなんだけど、その狡さや弱さ、滲み出る生真面目さやクレバーな部分を隠せない感じは、鈴木拡樹の天魔王なんじゃないかなあ。

 恐ろしくて、狡猾で、惨めで、小さい、けれど徹底的に悪の花として存在する鈴木天魔王は、私が観たかったヴィランの姿そのもので。

 同じことを繰り返してしまうけれど、鈴木天魔王を観ることが出来て、本当に良かった。天魔王としてキャスティングしてくれたことにただただ感謝しかない。

 

 あと、マモ捨と同じくらい、声の演技が素晴らしいんですよね。廣瀬蘭がドスを効かせるようになった時期と、鈴木天魔王が高めの声や少しコミカルな口調を入れるようになったのって同時なんじゃないかなと。下弦は終始どの人物も台詞が聞き取りやすいんだけど、声のトーンが重ならないというのも大きくて。

 実は宮野真守がアニメ版、鈴木拡樹が舞台版で同じキャスト(伏見猿比古)をつとめた舞台Kをチラッとだけ観たんだけど(まだ全部は観てないのでそのうち)、全部分じゃないにせよ、「鈴木拡樹が宮野真守の声帯で台詞言ってるぞ」って目を丸くすることがちょいちょいあって、その時に「宮野真守的な発声」は研究していると思うし、廣瀬智紀に関しては舞台弱虫ペダルで何度も共演しているから、おそらく意識的に差異を作っているんじゃないかなあと。

 舞台俳優に声の良さは必須だと思ってる人間なんだけど、鈴木拡樹はまさにそれを持っていると思うので、そこも武器としてこれから使っていくんだろうな。

 

 とりとめなくなってしまったけれど、下弦チームはまだこの段階でも更なる高みを目指していて、千秋楽に向けてめちゃくちゃ磨いていくだろうから、最終的にどんなものになるか見届けたかったなあ。

 素晴らしい作品をありがとう。この座組はもうすぐゴールを迎えるけれど、どうか最後まで怪我なく駆け抜けて欲しい。

 もっと書きたいことがあったはずなんだけど、思い出したら追記しよう。

そしてアンケートもちゃんと書いて郵送しよう……アンケート大事。

 

髑髏城の七人Season月【下弦の月】2回目を観に行ってきた

今更の話なんだけど、こっちははてなダイアリーが現在ツイートログ置き場になっている関係で急遽アカウント作ったブログのため、タイトルにHNが入ってるのがとても恥ずかしくてな……かと言って今更ブログタイトル変えるのも何か変なので、とりあえずこのままにしときます。しかし本読んでないな!

 

以下は敬称略。

 

突発観劇ツアーの話その1。

年末、友人と刀ステジョ伝を観に行ったときに、「次回作で鈴木拡樹の三日月続投が決まったら1月に髑髏城を観に行く」という謎の賭けをやったところ、見事にPVで告知されたので、急遽戻りチケットと飛行機を取って、1/13マチネを観に行ってきた。

ええ、ボーナスを三途の川に捨之介ですよ……でも行って良かった!

 

ということで、1回目の感想はこちら。

yuuki-sara.hatenablog.com

 

元々東京へは飛行機じゃないと往復しづらい田舎住みなのもあって、一つの舞台を多数回観に行く、という経験は実はほぼ初めてなんだけど(ライビュは除く)、ロングラン公演で定点観測的に観に行くっていうのがこんなに楽しいとは思わなかった。

12月の時と全然違う!!

前回観たときは、まだ手探り状態だったんだな、という再発見だったり、「あ、台詞増えてる」とか「ここの演技変わってる」とか、その1箇所で全体の印象が変わるような変化が入ってたりとか。これはなかなかに楽しいなあ。沼だけど。

何より、熱量がもっともっと高まっていたように感じたし、日替わりとかアドリブとか増えまくってて、けれど舞台の中心で宮野捨之介がきちんと主役をしてるから、座組の空気を壊すことなく世界が深まっていて、「これは楽しい! すごい!」っていうアハ体験を沢山出来た気がする。座組がお芝居にノッてくるってこういうことなのか、と見せつけられた気分。楽しかった!

 役が身についてくるってこういうことなんだなあと。これは多ステする方の気持ちがよくわかる。物理的な距離とお財布の関係でどうしても難しいんだけども!

そして贋鉄斎と捨之介のコーナーがアドリブだらけのおもしろコントコーナーになってたのが爆笑もので。笑いすぎて手を叩きそうになるのを必死で我慢してた。

鳥のときは阿部サダヲ池田成志さんだったんですよね。今更ながら鳥もせめてライビュで観ればよかったなあ(風はライビュで観たけど、花鳥は他の用事と被ってたのもあって全く観てない。今となるともったいないことをした……)

 

以下ネタバレ含む感想。昔から髑髏城を知っている方にとっては「何言ってんだ今更」かもしれませんがご容赦を。

 

 

 

 

宮野捨之介。「下弦の月」のセンターに主役としてきちんと立って、舞台の上で生きていたのがとても良かったなあ。ちょっと鼻声だったから心配になったけど、声が通るのは全く変わらず。素晴らしい技術だなあと思う。殺陣が身体に馴染んできたみたいで、元々のガタイがいいから見栄えがするなあ。

松岡霧丸。下弦の主役は霧丸なんじゃないかなあという認識を新たに(詳細は後ほど)。存在感がとても大きくなってた。相変わらずぴょんぴょんしててかわいい。

鈴木天魔王。表情は抑え気味になっていたんだけど、その分声の演技が幅を広げていたような気がする。宮野捨之介の声の演技に呼応している感じがして、とても耳が幸せだった。相変わらず恐ろしいし威厳もあるんだけど、時折コミカルな色合いの声音で話すシーンがあったりして、「なんだかお茶目さんだ」と可愛さを感じるようにも。

 だからこそなのか、孤独の深さを初見よりもずっと感じた気がする。

あと、髑髏党の配下に対しては、案外労働基準法とポリコレ遵守(そんなもんあるのかって感じだけど)のホワイト城主なのではという印象。そうじゃないとあんなに女性の配下から敬愛されないよなあ。下手打つと殺されちゃうけど。でも8年間で関東荒野にあの城を作って二千人(と当初書いてたけど二万人でしょ! 違うよ!)を食わせられる城主なんだから、本来ならばとても優秀だろうになあ。

以下妄想。本人は信長(本人ではなくてある種宗教的な象徴としての「織田信長」)の存在に心酔していて、だからこそ冒頭のあのシーンから天魔王であり続けたのかもしれないけれど、それは宗教に傾倒していないと自我を保っていられない弱さなのかも。捨之介はそのことに何となく気がついて、だからこそ倒したいのではなく止めたいと思ったのかなあと。

 一幕の圧倒的な君主感から一転、二幕でイギリスからの援護はないとわかり、家康の力は強大。蘭丸に対しては、蘭丸の弱みに目をつけて口説き落としたのではなく、天魔王が一蓮托生だった仲間を傍につけておきたくて、過去に縋ってしまった弱さの発露なのでは、と改めて思った。

 そんな中で天魔王としての仮面が綻びていって、実は蘭丸に庇われた(今更気がついたけど一幕と二幕で蘭兵衛と蘭丸に対して同じ台詞を言っているのに、シチュエーションが全く違うのが効いてるんだなあとか)時点で、ただの駒だと思っていた(思おうとしていた?)人間から庇護されてしまった、ということで既に矜持がひび割れていたのかもしれない、と感じたり。

 あともうひとつ。最後の最後に、「天魔王とは何だったのか」と思い返すときに、空っぽの金の兜しか残らない、そういうプランで天魔王の役を作り込んでいるのかなと思ったりもした。鈴木天魔王が見せる本来の姿は、ラストバトルで剥き出しにされて、自ら捨之介を刃を突き立てるあの一瞬にだけ見せるもので、それまでは完全に、幼い頃から仕え、近くで姿や声、仕草をずっと見てきた信長の完全コピーを演じている天魔王、として意識的に鈴木拡樹が演じているのかな、とか。ある意味一人二役版の天魔王的というか(風観てるからこういう風に思うのかもしれない)。

 長い。すみませんずっと天魔王をぐるぐるするんだよ……。

 「捨之介、蘭丸とは一蓮托生」っていう台詞(意訳)がものすごく耳に残ってる。

廣瀬蘭兵衛。蘭丸になってからの男前度が増していた! どう考えても蘭丸の方が本性だし、蘭兵衛の時は生きながら死んでいたようなものだったんだろうなあ。蘭丸に戻ってから楽しそうに人殺しに興じる姿は、信長の傍にいた頃の姿そのものだったんだろうか、と思いつつ。そして殺陣がめちゃくちゃ上手く激しくなっていて、天魔王と蘭丸の対決の時は息を呑んでしまった。ちゃんとも、努力の人だなあ……。

木村兵庫。気さくな兄ちゃんでありながら要所要所を締めていて、ああ、すごくいいなあと改めて思った。無界屋襲撃のシーンでの悲しみがとても切なくて、だからこそ、更なる悲しみに襲われた太夫を支えられるだけの男に成長しているんだな、っていうのがグッときた。荒武者隊の日替わりも毎回見たいぞくそう……。

羽野太夫。素敵度に磨きがかかっていた……蘭兵衛を撃ったあと、泣きながらずっと手を拭ってあげている姿があまりにも痛々しくて、だからこそカーテンコールで手を繋いで出て来る蘭兵衛と太夫の姿を観て「蘭兵衛この野郎」っていう気分に……とっても愛しい半身だったんだろうなあ……。

千葉狸穴様。最初に観たとき、実は前の方の頭で見えないシーンが多くて残念だったんだけど、今回はちゃんと観られてよかった。かっこいい!

渡京や生駒や剣布や爪月にもちょいちょい面白い台詞が増えてて楽しくて、一幕はひたすら笑いっぱなしだった。いん平さんの美味しいところを持っていくシーンも大好きだなあ。

そして何より贋鉄斎コーナーですよ。1月13日マチネ生駒日替わり「ポテチを箸で食べるタイプだから」に始まって、贋鉄斎と捨之介の掛け合いが面白い。捨之介がボソッとツッコミを入れながら生駒に叩き込まれた頭の剣を抜くんだけど、「頭皮が取れちゃうから」とボケつつ二人でカツラを押さえながら協力するっていうだけのシーンなのに何故あんなに笑えるのか。うまく説明出来ないのでライビュで観て。このノリを見るだけでも通いたいくらい好き。

 

ライビュ先行は終わってるけど一般発売が多分あると思うので。

l-tike.com

 

あと、個別感想とは別に、下弦の月から私が受け取った物語として。

妄想200%だからごめんな!

 

一応の主役は宮野捨之介ではあるんだけど、基本的には霧丸視点で全ての話が進行しているんだなあと。

まだ年若い、しかも復讐心に溢れた霧丸だから、捨之介は最初のうち謎の兄ちゃんだし、天魔王は一族を皆殺しにしたあまりにも冷酷なヒールだし、蘭兵衛に至ってはふわふわしてて何を考えているかよくわからない。でも、そんな中で、捨之介が包容力のある兄ちゃんであることがわかって、さらに気のいい兵庫や荒武者隊、そして無界里の包容力溢れる太夫や遊女たちの優しさに触れて少しずつ視野が広がってゆく。

 しかし蘭兵衛は何故か天魔王の元へ向かい、霧丸の目の前でよりによって霧丸の敵でもある天魔王に堕ちていく。

 過去のことなぞ何も知らない少年にとって、大人達の因業因縁は全く意味のわからないものだと思うし、でも、何もかも捨てたと言っていたはずの捨之介がそれに囚われていると知ってしまったときに、霧丸は復讐心よりも、自分を心配してくれた捨之介を何とか助けなきゃ、自分が大人にならなきゃ、っていう方向にシフトしたんだろうなと。ざっくり書いてるから味気ないけど、とにかく捨之介と霧丸の関係性がとても尊い

 「止めるんだ」と言っていた蘭丸と天魔王を同時に喪い、打ちひしがれる捨之介を見て、一族を殺された記憶が生々しい霧丸だからこそ、「今は自分が捨之介を支えるんだ!」っていう気持ちになったのかもしれない。

 宮野捨之介と松岡霧丸だからこそ出来るこのバディ感というかニコイチ感溢れる関係性を、12月よりももっと前面に出してきている感があって、個人的にはその……大変好きです……。

 で、このバランスって、多分天魔王や蘭兵衛が目立ち過ぎると成立しないものだと思うんだよね。とても少年ジャンプ的。でも昔のジャンプじゃなくて今のジャンプ。今のジャンプ漫画ってこじらせた大人ちょいちょい見かける気が。いや昔からか。

 大人だったり先輩だったりするけど、過去に挫折してこじらせた人たちに新しい気付きを与えるのが、主人公だったり新しく入ってきた後輩だったりするよね、と。男性から女性に設定を変えてやってきた霧丸は、まさにそれなんじゃなかろうか。

 とにかく、下弦はその関係性を見せる方向を選んだんだなと。でも、座組が一つの方向を見てる感じがあって、好みはあると思うけど、見せ方にブレがないのがとても好き。

 でもガンダムには乗ってもジャンプ原作の主役としてはデスノートのダークヒーロー・月をやった宮野捨之介と、まさしくジャンプマンガの主役であるナルトを2.5次元で演じている松岡霧丸が組んで演じているっていうのも面白い。

 

 あと、個人的に凄く適当なことを言うと。

 実は鈴木拡樹捨之介、宮野真守天魔王っていうのも観てみたい気はする。というのも

yuuki-sara.hatenablog.com

 

こちらでちょっと触れた少年社中作品での鈴木拡樹は、割と捨之介っぽい人物を演じている気がする&私が声優宮野真守の演技で一番好きなのが「ガッチャマン・クラウズ」のベルク・カッツェだっていうところからなんですが(笑)

 物凄くトリッキーな悪役なんだけど、「演技が抜群に上手いな!!」と思ったのはガチャクラ見た時だったので。

 

つーか霧丸主役でアニメ化とかいかがでしょう。1クールだったら月髑髏よりもちょっと長いくらいの尺だよ!

 

 次はライビュで上弦と下弦、そして2月にすごい前方席で下弦を観ます。今猛烈に大楽のチケット取れば良かったって後悔してるので、それくらいなら当たって砕けた方がいいっすね……うう。でも、物語の芯がはっきりしている以上、あとは進化と深化を続けるだろうから、座組みんながどう変化するか楽しみだよ!!

 そしてようやく上弦を観られるわけですが、上弦はどんな物語を紡いでいるのか楽しみ。

 

 

少年社中×東映「ピカレスク◆セブン」を観に行ってきた

突発観劇ツアーその2。

 

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髑髏城で上京することになったので、もう1本何か観たいなあと思っていた時に、丁度過去作品のDVDを観て「面白い……!」と思ったところだったので。

物凄く良いタイミングでチケットをお譲り頂けました。本当にありがとうございます!

1月14日マチネ。ネタバレありますのでお気をつけて。

 

 

 

こっちも信長出て来る七人もの。なんだか信長だらけの観劇ツアーでしたが。

 

 毛利亘宏主宰の脚本作品は、テレビではほぼ観ていなくて、「TIGER&BUNNYtheLIVE」と「ドラゴンクエストスペクタクルツアー」を会場で観ていたんだけど、どちらも胸が温かくなるエンディングで、そして悪役への視線が優しい、というのが物凄く印象に残っていて。

 そして、こちらは悪役だらけの群像劇。

 とにかく殺陣が凄い。濃厚でかっこいい。佃井皆美演じるジャック・ザ・リッパー双剣遣いとダンスとアクションが神がかっていて、ひたすら見惚れてた。

 メインキャラクターとしては善人感溢れる宮崎秋人のトクガワイエミツと、悪であることを隠さない鈴木勝吾のマクベスのぶつかり合いがありつつも、細貝圭の演じるノブナガの野望に立ち向かったりしつつ(複雑に絡み合っているので上手く説明出来ない……詳細はサイトで!)、ラストはイエミツとマクベスの熱い対決シーンが用意されているんだけど、ここから怒涛の殺陣の後、イエミツが振り絞る最後の一言がズドン、と胸に刺さって、すごく元気になって会場を出られた気がする。

 飛行機の時間があったから最後までカテコを観られなかったんだけど、心の中で拍手をしつつ、とても元気になってサンシャイン劇場を後にした。

 あと、少年社中作品って衣装の様式や色と芝居の内容がこんなに綿密に絡み合っているのか、ということに驚いたり。カラフルで独特な衣装は見ているだけで楽しいんだけど、それだけで終わらないことにびっくりした。

 個人的にはジャック・ザ・リッパーの心理をもうちょっと知りたかった感があるんだけど(ちょっと役回り的に気の毒さを感じたので……)、凄い人数の登場人物を、混乱させずにキャラ立てして、しかも2時間で話をまとめるって物凄い豪腕だと思うので、そのあたりにも「凄い……」と感じ入りつつ、目が足りないから視線があっちこっちに彷徨いつつ、だった。

 少年社中の何が好きになったかっていうと、確固たる「ハッピーエンドを見せるんだ!」っていう意志なんだけど、ピカレスク◆セブンはそれだけで終わらない部分もありつつ、でもイエミツの情熱に心動かされた。

 そしてマクベスの一節(だよね多分間違ってたらごめん)をキャスト全員で斉唱するのがかっこよくて、「ほぁあ」ってなってたからアレはいいものだ……。

 過去作品をもっと観ていたら、ピーターパンあたりは全然見方が違ったと思うので、これからもちょこちょこDVDを買おう。20周年第二弾もあったら行きたいなあ。

鈴木拡樹という名の舞台役者がいる

……ことをわかってなかった間抜けなブログ主の後悔、までがこのエントリのタイトルです。長い。

 

平成30年がやってきました。あけましておめでとうございます。

今年はちょいちょいブログの更新をすることを目標の一つにしたいです。気まぐれで三日坊主なブログ主ですが、エントリを見かけたらよろしくお願い致します。

内容は観劇だけじゃなくてドラマや映画の感想やら何やらでごった煮だと思いますが。

ツイッターもアカウント名yuuki_saraで持ってますので、そちらでは廃人のように呟いてます。

つーか前回のブログと文体が違うから何だこりゃって感じですが、その日の気分で文章が変わるので慣れてやって下さい……。

 

以下、敬称略&個人の感想です。

 

さて、昨年12月4日に髑髏城の七人season月(下弦の月)観劇以降、一体何をしていたかというと、観劇したり(舞台刀剣乱舞 ジョ伝 三つら星昔語り)、刀ステのBDを見たり、舞台のDVDを見たり、あと「風雲児たち」のトークショーに行ったりドラマ見て号泣したりしてたわけですが。

実は髑髏城の七人を観たあとに、「天魔王に鈴木拡樹の影が全く見えない」→「じゃあ、鈴木拡樹の素の芝居ってどんな感じなんだろう?」という興味を持って。

「折角だから、オリジナル脚本ストプレ出演の映像を見てみるか!」となったわけです。ここで既にかなりダメな沼に突っ込んでたことに気がつけば良かった。

 

で、先達の方々のオススメコメントやツイート、ブログを参照しつつ、昨日まで見たDVDの記録と感想を以下に記しておこうかなと。

yellow16.hatenablog.com

 

atm.hatenablog.jp

 

 

yuuki-sara.hatenablog.com

 

一応ざっと私が出演舞台のどれを観てきたか、というのを書いていくと、上記のエントリでも書いたように、一番最初に観たのは「舞台弱虫ペダル」のライブビューイングなんですが、主演のスピンオフ「野獣覚醒」は昨年末まで未見でした。

で、そこから随分間が開いて、「舞台刀剣乱舞 虚伝 燃ゆる本能寺」(再演)のチケットを、何のきっかけかは忘れたんですが、たまたま応募したら北九州公演が取れたので(実は当時倍率高いのも全く知らなかったのでビギナーズラック怖い)観に行ったんですが、観劇後に役者の演技に呑まれて呆然としたのは久々で。正直インパクトが強すぎて、後でフラフラしながら地元に戻ったような記憶しかなく。

続いて「舞台刀剣乱舞 義伝 暁の独眼竜」、「舞台煉獄に笑う」、「髑髏城の七人season月(下弦の月)」は劇場で観ました。スーパーダンガンロンパもチケットは取れていたんですが、他の用事が入ったせいで行かなかったことを今死ぬほど後悔している……。

ちなみに戦国鍋もディケイドも最遊記も全く通過していないので、私は一体何を見て生きてきたのか未だにわかりません。よく掠りもせずに今まで来たなあ……。

 

 ただ、当時はとりあえずチケットが取れた舞台を観に行くような感じで、オリジナル脚本のストプレにも出ているっていうのをよく知らず。髑髏城を観に行って思いっきり沼に蹴り込まれた自覚があったりなかったりしたので、「じゃあとりあえず行ってみよう!」と思ったのが以下の円盤。

 

disgoonie.jp

DVDは以下で販売中でした。略してSSS。とっっても好き。

DisGOONie Online Shop

「舞台煉獄に笑う」で激しい殺陣と舞台セットの特殊な造りが気になっていたので、同じく西田大輔演出のこちらをまず最初に選んだのだけど、とにかく殺陣が凄い。めちゃくちゃ殺陣の密度が高い。円盤で観ても圧巻だけど、それだけではなく。

 冷静で感情を表に出さない主人公・山県昌景が、ある瞬間、子供のように動揺して、ボロボロになって崩れ落ち、感情を爆発させるシーンがあるのが物凄く印象的で。一気に引き込まれて、あとはじっと画面に見入っていた……。

 

「これは他の作品も観ないと……!」と思っていた矢先。年末に友人とジョ伝観劇と忘年会を兼ねて会っていたときに一緒に観た円盤が少年社中のこちら。

 

www.shachu.com

DVDは現在少年社中の公演でしか購入出来ないそう。

で、こちらで演じているのは「ジュリエット」。「ロミオ」じゃなくて「ジュリエット」。

頭に疑問符を浮かべながら観たら、ジュリエットは男の娘だったという衝撃の展開が待っていたんだけど、とにかくジュリエットがかわいい。女装してようが男装してようがかわいい。そしてまだ演技は若いけれど、シェイクスピア劇の古風な台詞回しがきちんとハマっていて、悲劇に向かって突き進んだ後の、ラストシーンが力強く。

 あと、所作がたおやかなのに動揺。

 

で、慌てて次に観たのがこちら。

少年社中 15周年記念第三弾 第28回公演【贋作・好色一代男】特設サイト

円盤はこちらから購入出来ます。

www.kinokuniya.co.jp

井原西鶴好色一代男を下敷きにした艶笑譚で、役どころは主人公の色男・世之介の向こうを張るもう一人の色男・艶之丞。際どい台詞や単語もバンバン吐くし、イケメンであることに絶対の自信を持つ風な超絶モテ男なだけあって、チャラいし、視線だけで女を射殺す勢いなのに、色々あって世之介と契った挙げ句、ライバル心とは裏腹の恋情を抱くというなかなかにかっ飛んだ役どころを、コミカルに、しかし見せ所ではシリアスに演じていて、とてもメリハリが効いている。

 

こうなれば、ということで、次に観たのは少年社中出演3作目にして主演。

 

www.shachu.com

円盤はこちら。

www.kinokuniya.co.jp

歌舞伎の「三人吉三」を下敷きにしたSFもの。

……っていうだけでもかなり特殊設定なんだけど、鈴木拡樹演じるのは主演のお嬢吉三。普通に女装。しかも観ててぽかんとするほど美人で、仕草も格好もめちゃくちゃ女子力が高い。でも口調は男性的で声は低いし終始歌舞伎調の台詞回しという、物凄く作り込んだ役柄。途中で男装もするんだけど、そちらは本人が望みもしないのにモテまくってしまうというなかなかに面倒くさい役回り。

 歌舞伎では悲劇に終わる話の結末を変えるために、お嬢吉三が何度も試行錯誤を繰り返す、幸せな結末を求めて心情を吐露するシーンは圧巻で、元々の物語の良さも相まって号泣してしまった……どういう最後を迎えるかは是非観て欲しいなぁ。

「こいつぁ春から縁起が良いわぇ」という有名も有名な決め台詞を聞けるのも楽しい。

 

あと、これは絶対に押さえておけと言われていたシリーズ。

mottorekishi.com

mottorekishi.com

円盤はこちら。

マルガリータ

TV ASAHI MUSIC ONLINE STORE

(幻の城)

TV ASAHI MUSIC ONLINE STORE

 

なお、現在dTVで配信中なので、私はとりあえずそちらで観ました。

円盤は後日買う……今は髑髏でお財布がいっぱいいっぱいなんだよ……。

マルガリータ

pc.video.dmkt-sp.jp

(幻の城)

pc.video.dmkt-sp.jp

マルガリータ」はパブリックイメージの鈴木拡樹っぽい役だったので「ほほう」と思いつつ観ていたんだけども。

「幻の城」が。

八丈島に流された宇喜多秀家の狂気と正気の狭間を描く物語。

 ……いや本当に誰だかわからない。これ本当に鈴木拡樹なのか。若い頃の木村拓哉のような顔だったのにも驚いたんだけど、演技にとにかくびっくり。

 正気なのか狂っているのかといえば本当に狂っていて、口調はおぼつかないし足元はふらついているし目つきもおかしいのに、ときおりゾッとするような殺気を見せる。禍々しい邪神を観ているような気分になって、ただひたすら圧倒された。

 嗄れた声は老人のようで、しかしギラリと光る瞳に妄執が宿っているのが垣間見えて。終始「ああ、狂気に沈んだ人間なんだ……」と突きつけられていた。

 ラストシーンはおそらく死ぬ間際だと思うんだけど、完全に世界から魂の離れてしまった老爺だった。なんだこれは……凄いものを観た……。

 あと、途中に槍殺陣があって、長物を扱うのを観るのは初めてだったのでとても新鮮。

 

 

 他にも配信で、舞台ノラガミの第一弾・第二弾と、円盤で舞台弱虫ペダルの野獣覚醒を観たりしつつ。

 

 個人的な感触として、「2.5次元舞台よりオリジナル脚本のストプレの方が圧倒的に演技を盛りまくってるじゃないか(当たり前っちゃ当たり前だけど)……というかむしろ2.5だとめちゃくちゃ抑えてるのか」という結論に至りました。

 

 以下、さらに個人的な印象。鈴木拡樹が持っている演技のバリエーション自体がかなり多くて、2.5だとあるキャラをキャラたらしめるために、そのキャラクターが持っている要素以外の部分を出さないように抑えている&ストップモーション的にキャラクターのポージングを真似て、観客側の想像力を引き出している部分があるのかなと。しかも本人は自覚的にそれをやってそう。声をまねるだけではなく。

 「野獣覚醒」を観ていたときに、「あ、この荒北のポーズ、スペアバイク(荒北の番外編が掲載されているコミックス)の一コマにあった」というのを強烈に思い出したシーンがあって。おそらく意図的にそういう部分を盛り込んでいるのだろうなと(というのを刀ステのメイキングで話していた気がする)。

 

 対照的に、オリジナル脚本のストプレでは口調にしても声の調子にしても盛りまくっていて、とても自由にのびのびとやっている感じが。そうだよこういうのが観たかったんだよ……つーか本当に器用だな! 結局素の演技がどれかはわかるようでわかんなかったけど楽しそうに演じてるからいいや! 鈴木拡樹が演じてたらそれは鈴木拡樹の演技だ!

 

 例えば「三人どころじゃない吉三」は主演:鈴木拡樹じゃないと絶対に成立しない話だと思うわけで。

 お嬢吉三はジェンダー・ロールを飛び越えて男女の狭間を自在に動き回り、さらに男女問わず作品内での「美しさ」「格好良さ」の頂点にある。けれども、それ故に本人が悲劇を巡る仕掛けに気がついてしまってから、その「美しさ」「格好良さ」が悲劇を乗り越えるために物凄く邪魔になる、という展開は、鈴木拡樹の身体性と、大仰なくらいに芝居がかった口調、そして存在感と熱量があってこそじゃないかなと。うまく言語化しづらいんだけども。

(本旨とは少し外れるけど、少年社中の作品内での鈴木拡樹の存在は「作中におけるジェンダー・ロールを引っかき回す役どころ」に見えて、鈴木拡樹出演作品は、そこにカタルシスを得る構造で物語を組み立てているように感じる。それは鈴木拡樹でしかなし得ない部分だと思うし、本人も毛利亘宏主宰も意識しているのかなと)

 

 「髑髏城」を観てからずっと思っていたんだけど、本人の素の演技は堺雅人系統というか、どんなキャラクターでも作り込めるし、いい意味でマンガ的なわかりやすさもありつつ、主役級のインパクトを持っているのかなと。何より、楽しそうに演じてるように見えて、だから観ているこちらも楽しくなる。

よく客演する少年社中も早稲田大学演劇研究会の系譜だから、という連想もあるんだけども。ファンタジックな作風に負けない濃さと強さのある演技は観ていてエンターテインメント性に溢れているなぁと思う。

 蛮幽鬼のサジ役をやって欲しいと思っているのも、堺雅人との近似性を感じるから、というのがあり。再演やってくれたら全力出すよマジで……。

 

 一方で、板の上や観客席の状況や空気を物凄く読んでいるクレバーさがあって、座長のときであろうが二番手の時であろうが、自分が積極的にバランサーとなって会場の空気を調整している感じも。

 それはどちらかというと自分の演技を引いたものに見せる方向に働くかもしれないけれど、座組の一体感という意味ではものすごくプラスになるだろうし。

 

 そんなこんなで、もっとオリジナル脚本のストプレを観たいなあと欲が湧いてくるわけで。

 私自身は元々三谷幸喜のフィールドの人間なので、三谷幸喜脚本の時代物とかミステリの芝居に出て欲しさもあるし、古沢良太脚本とかも楽しそう。

 あと、映像でも大河とかNHKの時代劇に出てくれたら私は大歓喜する。ホント出て。

 正直、これだけ目を引くものがあれば、世間が放っておかないと思うし、これから大きな役が増えていくだろうな、っていうのは想像がつくんだけども。なんつったって世情に疎い私が知るくらいだし。

 

 ただ、少年社中だったり、西田大輔作品だったり、ペダルからのご縁の西田シャトナーさんだったり、刀ステの末満さんだったり、これからどんどん大きくなっていくであろう人々と積極的に組んで、新しい演劇の地平を切り拓いて欲しさがとてもある。権威にとらわれず、あちこちで演じて、色々な姿を見せてもらえたら嬉しいな、というのが今の正直な私の感想です。

 

 ……よりによってこんな深い沼にドボンするとは思わなかったので、困惑しつつも楽しい年末年始を過ごしましたよ……まだ観てない作品はいっぱいあるんだけど、週末髑髏城の2回目を観に行くので、その前にアップしとく。ああ、楽しみだなあ。演劇っていいなあ。