さて、繭期入門したばっかりの人がTRUMP~グランギニョルを一気に観た後、友人が確保してくれた見切れ席という名のすごく見やすい席(一般先行先行全滅だったんですよ……)で観劇してきた感想です。
戯曲集は品切れだったのでパンフレットを購入したんですが、用語があんまり頭に入ってないから、考察は全くないです。そういうのはベテランの繭期の方にお任せして!
以下ネタバレしかありません。お気をつけて。
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まず、観に行く前に日テレプラスでTRUMP→YouTube配信でSPECTERとグランギニョル、最後にU-NEXTのLILIUMを観てからマリーゴールド観劇に臨んだわけですが。
で、イニシャルの印象では。
「あっあっLILIUM女の子かわいい展開エグい好き、グランギニョル染様つらい、ちょっと待ってソフィ……ウル……」
というあんまり人間の言葉になってない感想だったんですけども。
開演しょっぱなの
「シルベチカ」
で精神的にボコられました……観てて良かったLILIUM……。
そこからずっとボコボコですよ……ガーベラに花言葉を紹介するシーンでLILIUMの登場人物の名前がずらっと並ぶとかどんな辛い展開よ……。
ただ、鬱々とした展開というよりは、個人的にはとても愛に溢れた展開だと思ったんですよ。
個人的にシリーズのどこかで妊婦が自分の腹をかっさばいて赤子を殺そうとする展開がどこかにあるかもしれないと思ってたんだけど、アナベルはすごく異端の子であるガーベラを愛してるじゃないですか(自分の発想がひでーな)。
ガーベラを不器用に愛し護る母アナベル、アナベルという最愛の家族を辛い目に遭わせてきたと思うあまりガーベラを憎むアナベルの妹エリカ、どこかつかみどころのない、しかしガーベラとアナベルを想う気持ちは確かに持っているヘンルーダ、アナベルに惹かれ家族になりたいと願い、ガーベラを疎んじるコリウス、そして母以外の全ての人間から憎まれ蔑まれる繭期のダンピール・ガーベラ。
全ての想いは一方通行なのだけれど、個人的にとても好きだったのは、誰かが別の誰かに向ける愛情のベクトルの長さ大きさは等価で、男女だからとか、姉妹だからとか、親子だからとか、それで差別化したり強弱をつけたりすることのない、ある意味平等に誰の想いも報われない世界であるというところで。
最期を迎える瞬間に、もしかしたら、彼らは愛する人のために死ぬことでその想いが成就した、という満足感を得るだけなのかもしれないけれど、そこが何故かとても心地良かったんですね。
それはLILIUMにおける永遠のクランを作ろうとしているソフィも同じことで、彼のウルへ伸ばした手は永遠にウルに届くことはない。紛い物のウルを作ったところで、彼は「僕は君、君は僕」とソフィに返してくれることはない。
ウルが「親友だろう」と言い放った瞬間のひやりとした空気は忘れられないなあ……。
TRUMPの頃から考えると、ソフィの歪みっぷりと孤独が辛くて、途中から「やめろ……やめてくれ……誰かソフィを救ってやってくれ……頼むよクラウス……」と心の中でずっと祈っていた気がする。しかも偽物のウルが星の轍を歌うとかどんな地獄だよ……。
これ、LILIUMでファルス=ソフィを演じた工藤遥さんが観劇していたらどう思ったんでしょうね……三津谷くんがLILIUMで立ち上がれなかったのよくわかるよ……。
そしてガーベラですよ。小さな家の中で、希望と名付けられ、ただひたすら母と自分だけが世界の中心にいた少女が、最後に母親から呪いの言葉を投げつけられた挙げ句、父も母も喪いひとりきりになってしまった自分に「マリーゴールド」・絶望と名付ける瞬間の痛々しさときたら。それがLILIUMのラストに繋がるのかと思うと、末満健一に人間の血は流れてるのか。酷い。
いやまあLILIUM好きなんですけどね!!
あと、非常に当たり前の感想を言うと、ミュージカル歌唱が完璧なキャストの方々が揃っていて、とても聴き応えがありました。壮さんと愛加さんと吉野さんetcは当然にしても、東くんと、何よりめいめいこと田村芽実さんですよ!!!
東くんは今年に入って国際フォーラムで「マタ=ハリ」を観ていて、「うっわ歌うまい発声もいい早くレミゼでマリウスやって」と思ったんですが、めいめいの圧は凄かった……これで19歳とか嘘でしょう……レミゼでエポニーヌやって欲しいし、何なら30歳過ぎてからファンテーヌもやって欲しい勢い。歌に込められた感情が溢れているのがとても良くて、ああ、ミュージカルを観たなっていう満足感が凄かった。
シアター・クリエあたりで観劇してみたいなあ。再演しませんかね?
素晴らしい女優さんであり歌手だなあと。今後が楽しみでたまらないです。
そしてTRUMPシリーズ10週年おめでとうございます。早く続編観せてください……そして末満さんには長生きしてもらって、ちゃんと完結まで脚本書いて下さいと編集者みたいなことを言ってみる。
とても苦しくて切なくて愛に溢れた、絶望の物語でした。